販路開拓は事業者の大きな課題の1つ。「小規模事業者持続化補助金」は小規模事業者の販路開拓に特化した補助金です。上限50万円(補助率3分の2)で、ホームページやパンフレット制作、店舗改装などに活用でき、使い勝手の良さから年々認知も高まっています。採択率の公式発表はありませんが、近年は約30%程度と言われています。今回は、小規模事業者持続化補助金を活用したい事業者の方に向けて、応募にあたっての条件や対象となる取り組み内容、選ばれるポイントについてご紹介します。
目次 |
1.そもそも、小規模事業者とは?
2.意外と身近な?取り組み内容 3.採択のポイントは公募要領にあり!? 4.まとめ |
小規模事業者持続化補助金は、その名の通り「小規模事業者」の事業を継続・発展させるための補助金です。まずは小規模事業者であるという条件を満たす必要があります。
商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律によると、小規模事業者とは下記のように定義づけられています。
卸売業・小売業 | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業以外) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
上記の条件以外にも、注意が必要です。
まず、「常時使用する従業員」には、会社役員や個人事業主本人、期間を定めて雇用される者などは含まれません。パートやアルバイトの方は、勤務状況によってカウント対象になるかどうかが変わってきます。5人もしくは20人を超えそうな場合は、商工会議所等へ事前にご相談ください。
また、補助対象になるのは株式会社や合同会社を含む会社や個人事業主だけです。一般社団法人やNPO法人、学校法人などは含まれません。申請時点で事業を行っていない創業予定者も含まれませんのでご注意ください。
小規模事業者持続化補助金では、商工会議所または商工会の相談員とともに作成した経営企画をもとに行われる「販路開拓の取り組み」や「業務効率化の取り組み」が補助金の対象となります。
販路開拓の取り組みについては、
・販促用のチラシ作成
・ウェブサイトへの広告出稿
・通信販売用のホームページ作成
・国内外の展示会・見本市への出展
・新商品(試作品)の開発
・小売店の陳列レイアウト改良
・飲食店の店舗改修
などが補助対象です。
販路開拓以外にも使えるパソコンやプリンター、文房具などの汎用品は対象になりません。また、業務効率化(生産性向上)の取り組みは、販路開拓等の取り組みとあわせて行う必要があります。
例えば、
・POSレジソフトウェアの導入
・経理・会計ソフトウェアの導入
・従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装
などが挙げられます。
多くの方が「近々やろうと思っていた」「今後ぜひやってみたい!」と考える身近な内容ではないでしょうか?補助対象となる取り組みについては他にもあるので、事例をご確認ください。
参考:日本商工会議所 平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金
《補助対象となり得る取組事例》
さて、気になる採択のポイントですが、日本商工会議所が発表する公募要領に大きなヒントがあると考えます。
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注目したいのは、「人口減少や高齢化などによる地域の需要の変化に応じた持続的な経営」です。販路開拓を実現するために「ぜひやってみたい!」と思う取り組みも、地域の需要の変化を踏まえていることが前提になります。
平成28年度補正予算の採択結果を見ると
・ホームページリニューアル看板の設置などによる宣伝広告強化
・第84回東京インターナショナルギフトショー出展事業
・入店率アップを狙った休憩スペース設置と店内外のリニューアル
などが一覧に挙げられています。
一見、どこにでもありそうな補助事業が並びますが、地域の需要の変化をしっかり捉え、販路開拓の実現性が高いと判断されたのではないでしょうか。単に「需要」だけでなく、人口減少や高齢化などの「変化」に着目したいところです。統計資料など数値的な根拠をもって述べる必要があるでしょう。
冒頭で述べたように、小規模事業者持続化補助金の採択率は約30%、選ばれるのは約3社に1社と狭き門です。「申請するなら採択されたい。でも、身近な取り組みに使える補助金だけに、どんな内容で申請したらいいか迷ってしまう…。」そう考える小規模事業者の方も多いと思います。疑問や不明点があれば、まずは中小企業診断士など専門家に相談してみることをお勧めします。また、日本商工会議所がまとめた採択事例集もぜひご覧ください。
参考:小規模事業者持続化補助金採択事業者取り組み事例集
瀧澤 はるか(中小企業診断士)