東京都の「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」(以下、明日チャレ助成金)をご存じでしょうか? 今回のポイントは受注型中小企業(※)を対象にした上限2,000万円の助成金です。
※受注型中小企業とは、最終消費者に対して自社の名で製品・サービス等提供していない企業(つまり下請け事業者を指します。)
今回の投稿では、本事業のポイントをご紹介しますので、ぜひご一読ください。
目次 |
1.明日チャレ助成金とは 2.採択事例(事例集からの抜粋) 3.まとめ |
下請け事業者は、価格決定や支払サイト等の取引条件面で比較的弱い立場にあるため、技術開発など設備投資の資金が潤沢ではありません。こうした背景から、受注型中小企業が助成事業を活用することで、技術・サービスの高度化・高付加価値化に取組みやすくなる「明日チャレ助成金」が公募されています。
《助成対象事業者》
■東京都内に本店があり、令和5年4月1日現在で、引き続き、2年以上事業を営んでいる中小企業者や組合等のうち「受注型中小企業」に該当する事業者
《上限額、助成率》
①小規模企業区分(製造業20人以下、サービス業5人以下)
⇒上限額:1,000万円(助成対象経費の3分の2以内)
②一般区分
⇒上限額:2,000万円(助成対象経費の3分の2以内)
《対象となる取組み例》
次のような例が挙げられます。
・製造業(自社の技術の高度化・高付加価値化に向けた技術開発)
◆薄型化・小型化に向け、加工技術の精度向上を図る取組み
・サービス業(自社のサービスの高度化・高付加価値化に向けた技術開発)
◆受発注を可視化するシステムを構築し、顧客対応力を向上させる取組み
《スケジュール》
提出締切 :令和5年4月10日(月)(※郵送のみ受付、当日消印有効)
書類審査 :令和5年4月11日から令和6月上旬
面接審査 :令和5年6月中旬
交付決定 :令和5年7月1日(予定)
助成対象期間 :令和5年7月1日から令和6年9月30日
※助成対象期間内に契約[発注]、取得及び支払いを完了させる必要があります。
《助成対象経費》
原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注加工費、産業財産権出願・導入費、技術指導受入れ費、展示会出展・広告費等
《本助成金の特徴》
■ものづくり補助金との比較について
ものづくり補助金は最大 1,250 万円かつ賃上げが必須であることに対し、本助成金は最大2,000万円であり賃上げ要件もないため、魅力的かつ利用しやすい助成金と言えます。
■面接審査について
書類審査に加え、2次審査として面接もあることが、本助成金の審査の特徴となっています。書類審査を通過しても、2 次審査で不採択となるケースもあり、しっかりと準備をして臨む必要があります。
■採択企業数について
令和2年度99社、令和3年度76社、令和4年度89社が採択されています。令和4年度の採択企業と取組テーマは以下を参照ください。
https://www.tokyochuokai.or.jp/images/tochu/R04/asucharesaitaku_R4.pdf
採択事例集には、本助成金を利用して自社の技術・経営基盤の強化に取り組んだ10事例が掲載されています。
https://www.tokyochuokai.or.jp/images/tochu/R03/3_23_asucharejireisyu.pdf
その中の一社の事例をご紹介します。
【事例:TOシール様】
TOシール様は、シール印刷専門の印刷会社として1968年に創業し、シール印刷のほかステッカーやポスター、オンデマンド印刷など様々な印刷に対応してきました。長年培ってきた経験・ノウハウからPOPシールの製造技術を有しており、独自開発を行う基盤もあります。
2017年から、ニーズが高まっていた「POPシール」(陳列した商品に貼って、買い物客に商品をアピールするためのシール)の製造に進出したところ、納入先から、「普通の平面状のPOPシールに比べて、もっと買い物客のアイキャッチになる“立体POPシール”は作れないか?」という要望をいくつもいただきました。そこで、本助成金を活用して最新の印刷機を導入することにより、立体POPシールの製造プロセスを確立し、得意先との協力によって“蝶シール”・“花シール”・“リボンシール”を製作しました。
どのシールも、初めての人でも組立てることができるデザインになっている他、裏面に作り方を載せたり、材料を厚くして変形しにくくするなど、様々な工夫を加えています。
今後TOシール様は、取引実績のある化粧品業界・医薬品業界に対して立体POPシールを販売促進するほか、デザイン能力の高い社員の育成にも取り組み、立体POPシールの事業拡大を図ります。
本助成金の審査では、以下の点が評価されたと考えています。
◆他社が手を付けていない立体POPシールに取り組んだ技術・サービスの優位性の高さ
◆POPシール製作に関する技術を蓄積したことによる実現性の高さ
中小企業が設備投資に活用できる補助金として、ものづくり補助金や事業再構築補助金等がありますが、東京都内で受注型中小企業という要件に合えば、『明日チャレ助成金』の活用も選択肢になりそうです。ご活用をお勧めいたします。
コンサルティング・ビジネス研究会 (中小企業診断士)
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