事業再構築補助金やものづくり補助金などが継続される中、設備投資に積極的に取り組む事業者様が増えています。今回は、補助金・助成金と併用でき、『固定資産税の軽減』『法人税の減免』などのメリットが得られる税制優遇の制度2つをご紹介します。
目次 |
1.国等の設備投資支援 2.先端設備等導入計画(固定資産税を最大5年間3分の1に軽減) 3.経営力向上計画(即時償却もしくは税額控除) 4.2つの制度を有効活用するために |
事業再構築補助金やものづくり補助金に採択されると、新たな設備などを購入し、補助金を受け取ることができます。しかし、設備投資に関する支援策は補助金だけでありません。設備投資によって生産性向上を目指す中小企業等に対し、事業計画を認定したうえで税制優遇の措置を行う「先端設備等導入計画」「経営力向上計画」があります。補助金で購入した設備等には固定資産税が課されるとともに、補助金の受給額が収入として計上されることにより法人税額が増える懸念も生じます。税制優遇の制度を併用し、より効果的に設備投資しましょう。
項目 | 先端設備等導入計画 | 経営力向上計画 |
メリット | 固定資産税の軽減 | 法人税の減免 |
提出先 | 各市区町村(※1) | 各地域の経済産業局等(※2) |
対象者 | 中小企業・小規模事業者等 | 中小企業・小規模事業者等 |
主な添付書類 | - | ・「経済産業局による確認書」
・「工業会の説明書」 など |
対象設備
(中古資産不可) |
・機械装置
・測定工具及び検査工具 ・器具備品 ・建物附属設備 |
・機械装置
・工具 ・器具備品 ・建物附属設備 ・ソフトウェア |
注意点 | 設備取得前に
必ず認定を受ける(※3) |
設備取得前または
取得後60日以内に 必ず認定を受ける(※4) |
(※1)本社等の所在地ではなく、設備などを設置する場所の市区町村です。
(※2)業種と地域により提出先の役所が異なります。
(※3)提出から認定までの標準処理期間は、市区町村により異なります。
(※4)提出から認定までの標準処理期間は30日です。
「先端設備等導入計画」は、中小企業・小規模事業者等が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図る事業計画を作成・提出して、市区町村から認定を受けることで、税制面や金融面のメリットを受けられる制度です。
(1)対象者
原則として業種に関係なく利用できます。
◆設備等を設置する場所の「市区町村」が、国から導入促進基本計画の同意を受けていること(ほとんどの市区町村が同意を受けています)
◆中小企業・小規模事業者等のうち、以下①~③のいずれかを満たす者
①資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
②資本金もしくは出資金がない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
③常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
(2)適用期間
令和7年3月31日まで(今年度から2年間、延長されています)
(3)対象設備
対象となる「先端設備」とは、労働生産性の向上に必要な生産・販売活動に使用される設備を指します。具体的には、上記の表に記載された対象設備が該当します。
(4)優遇措置について
◆税制面のメリット
購入した設備等の固定資産税が、3年間2分の1になります。例えば、5,000万円の設備を購入した場合、3年間で総額約154万円にのぼる固定資産税を半分にできるなど、高額な設備を購入する場合に、大きなメリットを受けられます。
※一部自治体で例外はあります
◆金融面のメリット
民間の金融機関(銀行・信用金庫等)から借入をする際に、信用保証協会の保証枠に、通常とは別枠が設定され、借入できる金額が増える可能性があります。
◆賃上げ表明による税制面の優遇拡大
賃上げ方針を従業員に表明した企業は、固定資産税が「3年間 2分の1」から「最長5年間(※) 3分の1」に軽減されます。
※令和6年3月末までに取得した設備:5年間、3分の1に軽減
※令和7年3月末までに取得した設備:4年間、3分の1に軽減
※優遇拡大を受けるには、従業員への給与等支給総額を、申請の翌年度までに1.5%以上増加させることを表明し、それを証する書面を市区町村に提出することが必要です。
※賃上げ方針の表明証を提出した上で、止む無く達成できない場合でも、税の追納等は発生しません。
「経営力向上計画」は、中小企業・小規模事業者等が生産性向上を目指す事業計画を作成・提出して、国の役所から認定を受けることで、税制面・金融面のメリットや法的支援などを受けられる制度です。
(1)対象者
原則として業種に関係なく利用できます。また、全国の中小企業・小規模事業者等が対象となります。
◆中小企業・小規模事業者等のうち、以下①~④のいずれかを満たす者
①資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
②資本金もしくは出資金がない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
③常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
④協同組合等
(2)適用期間
令和7年3月31日まで(今年度から2年間、延長されています)
(3)対象設備
機械装置・工具・器具備品・建物附属設備・ソフトウェアが対象です。工業会証明書または経済産業局の確認書を取得する必要があります。
(4)優遇措置
◆税制面のメリット
設備等を購入する場合に、以下①②のいずれかの税制優遇措置を選んで利用できます。
①即時償却
設備等の価額の全額を一度に費用計上できる(※2)
②税額控除 (※1) (※2)
設備等の取得価額の10% (※3)
※1 当該決算期の法人税額または所得税額の20%を上限とする
※2 上限を超える金額については、翌事業年度に繰り越し可能
※3 資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%
◆金融面のメリット
日本政策金融公庫による特別な融資制度が利用できます。また、民間の金融機関から借入をする際、信用保証協会の保証枠に通常とは別枠が設定され、借入できる額が増える可能性があります。
◆法的支援
事業承継の際に、旅館業や建設業などの許認可を引き継げるなどの法的な支援が受けられます。
「先端設備等導入計画」と「経営力向上計画」は併用できます。補助金と違って、基本的に不採択はありません。補助金を受け取った上で、先端設備等導入計画で固定資産税の負担を軽減し、経営力向上計画で法人税の減免を受けることで、より効果的に設備投資できます。補助金に採択された事業者様は、これら2つの制度を活用してはいかがでしょうか。
コンサルティング・ビジネス研究会 執筆チーム(中小企業診断士)
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