学生起業のすすめと、それを成功に導く創業助成金活用のすすめ

 起業はサーフィンに例えられることがあります。海に出ても(起業)、波があるところにいなければ波に乗ること(成長)はできません。成長市場に関連する最新技術を学んでいる学生は、この成長の波に乗れる確率が高いと言えます。このような学生には様々なメリットのある学生起業をおすすめします。そして、創業助成金を活用し、成長の波に乗りましょう。

創業助成金活用

目次
1.日本の成長戦略と学生起業の動向

2.学生起業が有利な点やメリット

3.学生起業を支援する創業助成金

4.まとめ

1.日本の成長戦略と学生起業の動向

 政府は、2018年6月15日に「Society5.0」「データ駆動型社会」に向けた「未来投資戦略2018」を閣議決定しました。これは、今後の成長分野や成長市場であるIoT、BigData、AI等への取り組みを示したものです。この中で、これら技術の開発や使いこなしには人材育成が重要であることが示されています。特にベースのスキルであるデータサイエンスの教育を文系理系を問わず実施する方向が示されました。今後はデータサイエンスの素養を備えた学生が増加することが期待されます。

 一方、企業経営者には、生き残りや成長に向け、これらの技術やデータに振り回されることなく、したたかに活用することが求められています。これは中小企業にとっても同様です。しかし、データをどう活用すれば良いか分からない経営者が大半という状況にあります。そのため、データサイエンスの素養を備えた学生にとって、企業のニーズの増大は、起業の機会や事業成長の機会、と捉えることができます。グラフは学生の起業意識の推移を表しています。起業希望者や起業準備者における学生の起業希望者や起業準備者の割合は増加傾向にあり、学生の起業意識は増加する傾向にあると言えます。

学生の起業意識の推移創業助成金活用

[出典2017年小規模企業白書より]    

2.学生起業が有利な点やメリット

 政府の投資戦略の動向や、企業のニーズの増加から、今後、学生起業は増加すると考えられます。では、学生起業の有利な点や、メリットは何でしょうか。一般的には次のようにメリットが考えられます。

① 時間的余裕
 本業の学業に対し、副業的な位置づけになりますが、社会人の副業と異なり、時間に余裕があります。

② 学業への効果
 データサイエンスを学んでいる学生の場合、実際に起業し、顧客へのデータ活用方法の提案や、データ活用サービスの提供により、新たな研究アイデアの創出等の、学業への効果も期待できます。

③ 人脈、経験が得られ、失敗時にもチャンス
 人脈や、経験が得られるため、失敗時も多くのチャンスが残されていると言えます。例えば失敗した場合は、卒業後の就職も選択肢の一つですが、起業の経験は就職に大きなアピールになると言えます。

3.学生起業を支援する創業助成金

 今後、成長分野に関連する学生起業の増加が見込まれますが、事業の成功に向けては資金の調達は重要な課題となります。 これに対し、東京都の創業助成金制度が利用できます。

大きな成長や雇用創出が期待できる都内の創業予定者や創業間もない中小企業に対して、創業期に必要な経費の一部を助成する「創業助成事業」です(TOKYO創業ステーションより)。

以下のような特長があります。

創業助成金の特長

項目 内容
助成対象 都内の創業予定者、又は、創業後5年未満の中小企業者、のうち一定の要件(*)を致す者
助成対象期間 交付決定日から1年以上、最長2年
助成限度額 300万円
助成率 3分の2
主な対象経費 従業員人件費、賃貸料、広告費、設備居費、他

(*)「TOKYO創業ステーションの事業計画策定支援修了者」「東京都制度融資(創業)利用者」「都内の公的創業支援施設入居起業」等

 人件費や賃貸料といったどの企業でも発生する経費も助成対象であることが特長ですので、多くの学生起業家にとって使い易い制度だと言えます。

 以下のグラフは創業助成金の過去の採択者の統計です。学生起業は20代となりますが、まだまだ申請数が少ない状況です。今後有望な成長市場での学生起業の増加に伴い採択数も増加すると考えられます。業種の統計では、データサイエンス系が属するサービス業や情報・通信業の採択数は、全体の半数以上を占めるという状況にあります。

創業助成金の過去の採択者の統計創業助成金活用

[出典:TOKYO創業ステーション、事業概要より]

まとめ

 いかがでしたでしょうか。市場成長やニーズの増加が見込まれる分野での学生起業は、今後増加すると考えられます。スピードが求められる分野であるため、創業助成金等の施策を上手く活用することが、重要と思われます。まずは、中小企業診断士等の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

執筆者

西本 哲 (中小企業診断士)

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