デューデリジェンスとは会社の健康診断!小さな会社の社長にも分かりやすく解説します!

 会社を買収・売却(M&A)するときに、よく耳にするのが「デューデリジェンス」。難しそうな言葉ですが、要は会社の健康診断。たとえ小さなM&Aであっても社長が知っておきたい大切なことをお伝えします。

目次

1.デューデリジェンスとは、その意味について
2.M&Aの流れとDD
3.スモールM&AにおけるDDのポイント
4.まとめ

1.デューデリジェンスとは、その意味について

デューデリジェンスは、英語で書くとDue Diligence、DDやデューデリ、買収調査や買収監査と呼ばれたりします。

DDは、M&Aにおいて、買収対象の会社を買い手が健康診断することです。買い手にはその買収により達成したい目的があります。例えば売上を増やしたい、事業のライセンスを引き継ぎたい、良い人材を取り込みたい、などです。

でも情報が少ないと、果たしてその会社を買収することで目的が達成されるかどうか分かりません。そこで、対象会社の健康診断を行い、目的が達成されるかどうか判断出来るように情報を集めるのです。これがDDです。

したがって、M&Aの目的が様々であるように、DDにも様々な種類があります。一般的なDDは財務、税務、法務、事業(ビジネス)ですが、買収目的に応じてその他のDDが行われることもあります。

種類 主な調査項目 / チェックリスト
財務DD 不良資産や簿外債務の有無、正常収益力
税務DD 追加の税金発生の可能性、欠損金の有効性
法務DD 係争案件や違法行為の有無、株式の所有状況
事業DD 会社の強み・弱み、事業計画の妥当性
人事労務DD キーマンの把握、労務管理の状況
ITDD ITシステムの運用状況、M&A後のシステム投資の必要性
不動産DD 土地・建物(工場、倉庫)の劣化状況、有害物質や土壌汚染の有無
2.M&Aの流れとDD

M&Aを行う時、どんなことがどのタイミングで起こるのか、その時直面していることが、後々どんな意味を持ってくるのかを理解しておくことはとても重要です。そこで、以下ではM&A全体の流れを俯瞰し、DDはどのタイミングで実施され、どんな意味を持つのかを見てみましょう。

M&Aの流れは下図の通りです。M&Aはよく結婚に例えられますが、お互いに結婚相手を探す段階が(1)事前検討ステージ(下図青色部分)、出会った後に本当に結婚しても良いかを検討する段階が(2)実行・交渉ステージ(下図緑色部分)、実際に結婚し幸せな家族を築いていく段階が(3)統合ステージ(下図オレンジ色部分)と大きく理解してください。


(1) 事前検討ステージ(青色部分)

 このステージは結婚に例えるとお互いに相手を探す段階です。M&Aにおいては、買い手は①M&Aの目的を検討し、②売り手(買収対象となる会社)を探します。一方、売り手は、①M&Aに臨む準備をし、②買い手を探します。買い手を探す際、自分の会社の強みや魅力を紹介する企業概要書というものを作成したりします。

(2) 実行・交渉ステージ(緑色部分)
 このステージは結婚に例えると本当に結婚しても良いかを検討する段階です。M&Aにおいては、買い手と売り手が実際に話を進める段階で、①事前交渉、②DD、③最終交渉に分けられます。

① 事前交渉:
まず、株式の買収価額や主要な条件につき大まかに仮合意します。この時に交わされる書面のことを基本合意書(LOI、Letter Of Intent)と言います。

② DD:
その後、買い手は知りたい情報を入手出来るよう、外部の専門家の力も借りながら、情報の要求や質問を行います。一方、売り手は買い手の様々な要求に対応することになります。

③ 最終交渉:
DDが終わると、そこで得られた情報を基に、買収金額や買収条件について最終交渉を行います。双方ともに納得いく条件であればM&Aは成立となります。

(3) 統合ステージ(オレンジ部分)
 このステージは結婚に例えると幸せな家庭を築いていく段階です。M&Aにおいては、買い手が中心となり、M&Aの目的が達成されるようお互いの連携を深めていくことになります。これはM&Aの効果を生む重要なステージで、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれたりします。

知っておきたいことは、DDにおける発見事項を基に、買収価額やM&Aの最終条件交渉が行われるということです。例えば、DDで帳簿に載っていない大きな負債(簿外負債)が見つかったとします。その場合、買い手は買収価額の引き下げを要求したり、簿外債務を引き継がないように別の買収方法を検討したり、場合によってはM&A自体を中止することもあります。よって、買い手はDDにおいて出来るだけリスクを発見しようとします。これに対し、売り手としては不都合な事実を隠したくなりますが、DDの段階で嘘をつくと後程大きな問題となる可能性があるため、隠すことなく情報を開示することが一般的です。

3.スモールM&AにおけるDDのポイント

スモールM&Aには決まった定義はありませんが、例えば商店街のお花屋さんが隣町のお花屋さんを買収するようなケースをイメージしてもよいでしょう。それでは、スモールM&Aにおいて、売り手・買い手はどのような点に注意する必要があるのでしょうか。それぞれ分けて見てみましょう。

(1) 売り手
 売り手にとって重要なことは、将来のDDで指摘される事項を想定し、最初の事前検討ステージでそのような事項を改善しておくことです。それにより、高い金額でM&Aが成立する可能性を高めることが出来ます。

小さな会社の場合、一般的に会計処理は税務会計を採用しており、DDによって引当金などの簿外の債務を指摘されることが多くあります。また、会社のお金を私的に使用していたり、不明瞭な会計処理があったり、社内規定や社員との雇用契約書・過去に行った株式の売買契約書が無いなど、不明な事項が存在していることもあります。このような場合、M&Aの買い手はリスクが大きいと感じ、買収価額の引き下げや、M&Aの中止に繋がってしまうことがあるのです。

その他、より高く良い条件で将来M&Aが成立するように、事前検討ステージで事業の磨き上げを行っておくことも有効でしょう。

(2) 買い手
買い手にとって重要なことは、DDの費用負担を抑えながら有効なDDを実施することです。
DDは何を誰にどこまで依頼するかによって費用が変わります。スモールM&Aであっても、DDを1件依頼すると数十万から1百万程度の費用がかかってしまいます。しかし、小さな会社においては通常多額の費用や時間を投じることは困難です。よってDD費用を抑えながら有効なDDを実施するためには、下図のように、M&Aの目的に照らして重要性が大きく、でも自分では調べられないことを抜き出して専門家に依頼することです。最初から全て専門家に丸投げしてしまうと、DD費用を抑えることが難しくなってしまいます。自分で抜き出すことが不安な場合は、その段階から専門家に手伝ってもらう方が、結果としてコストを抑えた有効なDDが実施できるでしょう。

また、それぞれのDDを別々の専門家へ個々に依頼していると、DD費用の合計は大きくなる傾向にあります。弁護士、税理士、会計士、中小企業診断士といった多様な専門家を擁するグループへ依頼することで、全体の費用を抑えることが可能となるでしょう。

4.まとめ

DDは買い手にとっても売り手にとってもM&Aの成否を分けるとても重要なイベントです。しかし、準備や対応が後手に回った結果、失敗してしまう事例も散見されます。M&Aを検討している場合は、なるべく早く専門家に相談することをお勧めします。近頃スモールM&Aのお問合せをいただくことが増えています。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆者

坂田 映(公認会計士 米国公認会計士 税理士)

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