平成30年6月29日に平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」(1次公募)の採択結果が発表されました。申請件数は17,275件、採択件数は9,518件であり、採択率は過去最高の55.1%となりました。採択結果についてその傾向等をお伝えします。
なお、二次公募(9月10日締切が9月18日締切に延長)は10月頃に採択結果が発表されるようです。CB研でもご支援している企業があるため、採択結果が待ち遠しいです。
目次 |
1.採択数・採択率は上昇傾向に
2.都道府県別の採択傾向について 3.第四次産業革命型案件(IoT・AI・ロボット)について 4.まとめ |
ものづくり補助金がスタートした平成24年度補正予算から、直近の29年度補正予算までの6年間の採択数と採択率の推移を、年度毎に、以下の通り纏めました。
都道府県別の本補助金の採択数の分布比率を、都道府県別の中小企業数の分布比率と比較する事で、都道府県別の本補助金の利用度合いの傾向を確認しました。
<中小企業数の分布比率よりも、採択の分布比率が高い都道府県(平成29年度)>
<中小企業数の分布比率よりも、採択の分布比率が低い都道府県(平成29年度)>
中小企業数の分布比率よりも本補助金採択の分布比率が最も高い(本補助金の利用度合いが高い)都道府県は静岡県であり、過去3年間、この傾向を維持しています。また、平成29年度補正予算では、愛知県と山形県の伸びが顕著になっています。一方、中小企業数の分布比率よりも本補助金採択の分布比率が低い(本補助金の利用度合いが低い)のは、首都圏の1都3県(東京、千葉、神奈川、埼玉)となっています。特に東京都は、平成29年度補正予算で、その比率差が拡大しており、実際の採択件数も全都道府県で唯一、減少(▲7件)しています。都内の中小企業数の多さに比して、本補助金を活用する中小企業の比率が小さい状況にある事は、逆に言うと、今後の補助金活用のポテンシャルがあるとも言えます。これらの分布差の現象は一過性の可能性もありますが、平成29年度補正予算では、これまでとは異なる傾向がでてきているので、今後の動向を注視していく必要があります。
政府が掲げた「日本再興戦略2016」では、
今後の生産性革命を主導する最大の鍵は、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する「第4次産業革命」であるとされています。その導入を後押しする為に、平成28年度補正予算では「第四次産業革命型」の類型を設置しました。
平成29年度補正予算ではこの類型はなくなりましたが、この分野での設備投資は今後も拡大する可能性がある為、その動向を纏めました。以下は採択件数が一番多い東京都の事例の中から、事業計画名にIT関係の文言がある案件をピックアップして纏めました。
IT案件(事業計画名にIT関係の文言がある案件)の合計では、その件数、比率共に減少傾向にあります。これは、「第四次産業革命型」の類型がなくなった事、平成29年度から新設された「IT導入補助金」への移行影響が考えられます。但し、そんな中でもロボットとドローンの案件数は拡大しています。これは、IT導入補助金(ソフトウエア、サービス等のITツールが対象)の対象外となっている事もありますが、特に製造現場や保守現場での生産性向上の為に、導入が進んでいる事の表れであると考えます。
ものづくり補助金については、採択数・採択率ともに上昇傾向にありますが、都道府県別にその採択傾向等変化もでてきています。採択に向けては、早めに専門家へ相談し、最新の情報を入手し、各種準備を行う事が重要です。本補助金を有効活用する事で、中小企業・小規模事業者の生産性を向上させ、足腰の強い日本経済を構築していく事を期待します。
内田泰裕(中小企業診断士)