創業時だからこそ使える!資金に関する支援制度!

コロナ禍の環境変化にあっても、それをチャンスと捉えて新たに起業する方がいらっしゃいます。創業時はやるべきことがたくさんあり、不安もあると思います。その中でも、今回は創業時の資金調達についてご紹介いたします。

 

目次

1.融資制度
2.補助金・助成金
3.最後に

1.融資制度

ほとんどの業種において、創業時には開業資金が必要です。資金が必要になった時に役に立つのが、創業者および創業間もない方が使えるお得な融資制度です。代表的なものをご紹介します。

創業融資

(1)新創業融資制度(日本政策金融公庫)

国が出資する銀行である、日本政策金融公庫の融資制度です。

【対象】新たに事業を始める方、または税務申告を2期終えていない方
【使い道】設備資金および運転資金
【融資限度額】3,000万円(うち運転資金1,500万円)
【利率】日本政策金融公庫のホームページ(新創業融資制度の概要)参照
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html
【担保】原則不要

事業の実績がない創業時でも、事業計画などがしっかりとしていれば借入しやすく、融資まで約1か月程度とスピーディーなのが特徴です。一方、審査が通らないこともありますし、基本的に創業資金の10分の1以上の自己資金が必要となります。

(2)信用保証協会つき創業融資

都道府県や市区町村にも、創業を促進するための融資制度があります。もっとも自治体が直接創業者にお金を貸すわけではなく、

・金融機関(銀行・信用金庫etc.)が創業者に必要なお金を貸す
・創業者は信用保証協会の審査を受け、保証料を支払う
・信用保証協会は保証人となり、創業者が返済できないときは代わりに信用保証協会が金融機関に弁済する(代位弁済)
・自治体は保証料や金利の一部負担などで創業者をバックアップ

という仕組みです。

信用保証協会の保証がつくことで借入しやすく、自治体の一部負担などで創業者の負担が軽減されるなど、お得な制度です。また、東京都の場合、都の創業融資・市区町村の創業融資のどちらを利用しても、後述する創業助成金の申込資格を得られます。特に東京23区の創業融資では、申込に必要な創業計画書の作成について、中小企業診断士等の相談員のアドバイスが受けられます。また、杉並区役所の場合、金利1.8%/年のうち1.6%を区が負担することで本人負担は0.2%になるなど、手厚いサポートが受けられます。反面、創業計画書の作成には通常1か月以上を要し、その後に区役所から紹介状(あっせん状)を発行してもらうことで、金融機関への申込が可能になるので、借入までに時間がかかります。東京都や市町村の場合、

・利子補給あり、市による承認書の発行手続が必要(武蔵野市)
・利子補給なし、申込は金融機関に直接行う(都庁や役所での手続不要)

など、制度は様々です。自治体の創業融資を利用する際は、創業する場所の都道府県・市区町村の制度をそれぞれ調べて比較したうえで、ご自身にとって有利な制度を使い分けることをお勧めします。なお、融資を実行するかどうかの判断は金融機関が行いますので、減額されたり借入できない場合もあることに注意が必要です。

(3)自治体独自の融資制度

自治体ごとに、独自の創業融資制度を設けている場合もあります。東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業」をご紹介します。

【対象】女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で、都内での創業計画がある方、または創業後5年未満の方
【使い道】設備資金および運転資金
【融資限度額】1,500万円(運転資金のみは750万円)
【期間】最大10年間
【利率】固定金利1%以内
【担保】原則不要

メリットは、低利率であることに加え、創業前後のセミナーや、事業計画・決算書の作成等に関する専門家への相談を無料で受けられることです。また、後述する東京都の創業助成金の申込資格が得られます。

<女性・若者・シニア創業サポート事業>
https://cb-s.net/tokyosupport/

2.補助金・助成金

補助金

融資はいずれ返済が必要な資金ですが、補助金・助成金は返済が不要なため、資金が不足しがちな創業時には魅力的です。今回は「東京都創業助成金」について説明します。

(1)東京都創業助成事業の概要

例年、春と秋に募集があり、賃借料や人件費など、売上にかかわらず必要な固定費が対象となる点が大きな特徴です。

【対象】東京都内で創業を計画している、または開業届提出から5年未満で、東京都の予算等で実施する創業支援制度を利用している方
【対象経費】賃借料、人件費、器具備品代、広告費
【限度額】300万円(対象経費の3分の2以内)
【期間】6か月間~2年間

「創業支援制度を利用している方」という条件の中には、前述した

・信用保証協会付き創業融資制度
・女性・若者・シニア創業サポート事業

の融資も含まれます。それ以外にも、以下のような比較的利用しやすい制度もあります。

・認定特定創業支援等事業による支援の利用
・TOKYO 創業ステーションが実施する「プランコンサルティング」による事業計画書策定支援の利用
・東京都中小企業振興公社が設置した創業支援施設に入居

<東京都創業助成事業>https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei/

(2)活用事例

コンサルティング・ビジネス研究会が支援し、採択された事業者の事例をご紹介します。

<事業>人材派遣
<対象経費>賃借料、人件費
事業拡大にあたり、より多くの女性派遣スタッフを採用し、教育するために、子供とともに出社できる場所が必要となったことと、派遣先企業を新たに獲得するために営業担当者が必要となったことから、本制度を活用しました。

<事業>リスキリング教室の運営
<対象経費>賃借料、器具備品代、人件費
新たなプログラムの開始にあたり、より広く、交通の便のよい教室への移転が必要であったことと、他社と差別化し優位性を確立するために質の高い講師の獲得が必要であったことから、本制度を活用しました。

(3)申込時のポイント

とても魅力的な助成金ですが、事業計画書の書類審査に加え面接審査もあり、令和3年度の採択率は13.8%と狭き門です。そのため、事業計画書で事業の実現性と収益性、解決できる社会課題、資金調達など、様々な角度から妥当性を記載することが求められます。創業前後で実績が少ないからこそ、事業者の熱意や思い、社会課題の解決に繋がることなどを、審査員に感じてもらうことが大切です。また、面接審査では収支計画の数値に関する質問も多く、なぜ2年後にこの売上・利益になるのかについて根拠を説明する必要があります。

3.最後に

今回は創業時の資金に関する制度を中心にご紹介してきましたが、各自治体とも創業者を増やしたい方針から、様々な制度を設けています。創業資金の調達については、ぜひ自治体などのホームページ等で情報を集めてください。当研究会には多くの専門家・コンサルタントが在籍しており、創業に関する様々な支援が可能です。実際に「創業助成金」をはじめ多くのご相談をいただいておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

執筆者

コンサルティング・ビジネス研究会 那須 美紗子(中小企業診断士)