事業承継・引継ぎ補助金を活用して事業承継をより円滑に!

多くの中小企業が悩む課題として「事業承継」があります。事業承継とは「現経営者から後継者へ経営をバトンタッチすること」ですが、良い後継者がなかなか見つからないことも多く、約127万社の企業で後継者が決まっていないとも言われています。事業承継の形態は以下の3つに分けることができます。
(1) 親族内承継
(2) 役員・従業員への承継
(3) 社外への承継(M&A)
最近では(2)・(3)のように親族以外への承継が増えていますが、せっかく後継者が見つかっても高額なコンサル料等がネックとなり、バトンがポロリと落ちて承継できないこともあるようです。こうした事業承継にかかる課題を解決するうえで注目されているのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。今回はこの補助金について解説します。

目次

1.事業承継・引継ぎ補助金とは
2.経営革新事業
3.専門家活用事業
4.注意すべき点

1.事業承継・引継ぎ補助金とは

本補助金は、事業承継にかかる経費の一部を補助することで中小企業の事業承継やM&Aを促進するための制度です。具体的には以下の3つの制度があり、併用も可能です。

(1) 経営革新事業(事業承継後に行う新たな価値を生み出す取組みの経費を補助)
(2) 専門家活用事業(M&Aに伴う専門家の助言や仲介に関する手数料等を補助)
(3) 廃業・再チャレンジ事業(事業承継によって再スタートを切るにあたり廃業等の経費を補助)

本補助金は、事業承継の当事者の視点に立つと、さまざまな場面で活用できる可能性があります。特に活用できる可能性が高い「経営革新事業」「専門家活用事業」について、以下で詳しく説明します。尚、本補助金については公式サイトもご参照ください。

事業承継・引継ぎ補助金 (jsh.go.jp)

2.経営革新事業

経営革新事業は、経営を引き継いだ承継者が主体になって行う顧客に高い付加価値をもたらす新たな事業活動に係る経費を補助するもので、大きく3つのタイプがあります。

(1) 創業支援型(経営を引き継いだ本人が創業した場合)

(2) 経営者交代型(親族内承継等で新たに経営者となる場合)

(3) M&A型(第三者が企業の経営権を取得して引き継いだ場合)

各タイプすべてに求められていることは、引き継いだ資産や人材などの経営資源を活用し、承継者が新たな事業活動に取り組むことです。具体的には以下のいずれかに取り組むことが要件となります。

①デジタル化に資する事業(例)AIやロボットを使った自動制御システムの開発

②グリーン化に資する事業(例)省エネ効果の優れた新製品の開発

③事業再構築に資する事業(例)リゾートホテルが新たにサウナ事業に進出

補助金の対象となる経費や補助率等は以下のとおりです。特に、他の補助金ではあまりカバーしていない「人件費」「家賃」が対象となることが特徴であり、メリットです。下表もご確認ください。

事業承継・引継ぎ補助金を活用して事業承継をより円滑に!

出典:事業承継・引継ぎ補助金パンプレット

3.専門家活用事業

ガイドラインでは、経営者保証を求めない条件として以下の3つを示しており、改革プログラムでもこれらが重視されています。

(1) 法人と個人の一体性の解消
法人と経営者個人のお金が区別されていない企業は、経営者保証が必要になります。特に経営者への貸付金や仮払金などが多い企業や、事業に使う工場や車両を経営者が所有している場合等が当てはまります。これらを解消した企業には、経営者保証を求めないことになります。

(2) 財務基盤の強化
経営者保証を外すには、借入を返済できるだけの内部留保または利益を確保する必要があります。特に債務超過の場合は、「近い将来、債務超過が解消されるかどうか」が要否の判断ポイントになります。

(3) 財務状況の適時適切な情報開示
決算の時だけではなく、定期的に財務状況を金融機関に対して報告することが重要です。そのためには、月次の試算表等を金融機関へ提出するとともに、経営状況や事業計画について説明することも有効です。

中小企業がM&Aに取り組む際、M&A特有のノウハウを持った専門家や専門機関などの力を借りることが多くなります。その際、以下のような経費が生じ、企業の負担となります。
・売買の対象となる会社の資産価値を精査するため、専門家にかかる経費
・売り手と買い手をつなぐ仲介会社やマッチングサイトの手数料

専門家活用事業は、こうしたM&Aに伴って生じる専門家等への経費を補助するもので、以下の2つがあります。
(1) 買い手支援型(経営を譲り受ける中小企業等が対象)
(2) 売り手支援型(経営を譲り渡す中小企業等が対象)

対象となる経費や、補助率・補助上限額は以下のとおりです。

事業承継・引継ぎ補助金を活用して事業承継をより円滑に!2

出典:事業承継・引継ぎ補助金パンプレット

4.注意すべき点

(1) 余裕を持ったスケジュールを組む

本補助金の申請では、以下の準備に相応の時間がかかります。

・電子申請を行うために必要な「GビズIDプライム」(行政手続のための共通アカウント)の取得
・申請書の作成や、申請に必要な書類の取り揃え
・経営革新事業の場合は、認定経営革新等支援機関(税理士・金融機関・中小企業診断士等)による確認書の取得

本補助金の公募については、時間がない場合は申請を次回の公募以降に先送りするなど、余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。

(2) 依頼する専門家・仲介業者に条件があります

専門家活用事業では、国が制定した「中小M&A支援機関に係る登録制度」に登録された専門家・仲介業者の利用分のみが補助対象経費となりますので、注意が必要です。後継者が見つからず廃業する企業が増えるなかで、円滑な事業承継は今後の日本にとって待ったなしの課題です。
本補助金は、後継者が行う、顧客に高い付加価値をもたらす新たな事業活動に係る経費を補助するだけでなく、事業承継に伴う専門家経費を補助する点が特長です。この補助金が活用され、事業承継が進むことを願ってやみません。コンサルティング・ビジネス研究会には事業承継・M&Aに詳しい専門家も在籍していますので、お気軽にお問い合わせください。また、同研究会ホームページでも事業承継・引継ぎ補助金を紹介していますので、ご覧ください。

(経営革新事業)https://cb-ken.com/service/shoukei/
(専門家活用事業)https://cb-ken.com/service/senmonka-katsuyo/

執筆者

コンサルティング・ビジネス研究会 中小企業診断士 島岡 達郎

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