創業予定者だけでなく創業5年以内の経営者でも活用でき、手厚い補助が人気の創業助成金。今回はこの創業助成金の活用メリットと採択率をアップする方法をお伝えします。活用できる支援策は抜け目なく活用していきましょう。
目次 |
1.創業後でも申請可能!助成額も手厚い東京都創業助成金
2.創業助成金の申請条件にもなっている創業支援事業とは? 3.人気の高い創業助成金。採択率のアップするために必要なことは? 4.まとめ |
東京都中小企業振興公社が募集する東京都創業助成金。この創業助成金は、中小企業庁の「地域創造的起業補助金」などの一般的な創業補助金に比べて補助が手厚く、とても使い勝手の良い助成金です。
まずは、助成の対象者です。創業補助金は「創業予定者」を対象にしたものが一般的ですが、本創業助成金では創業予定者に加えて、「創業して5年以内の方」も対象となっています。創業後に活用できる事業は多くありません。
次に助成額は、助成限度額は300万円(下限100万円)、助成率は2/3で、実際に助成される金額は最大200万円となっています。地域創造的起業補助金は補助限度額が200万円、補助率は1/2であり、補助額は最大100万円。実際の助成(または補助)額には100万円もの違いがあり、手厚い助成を受けられる事業といえます。
補助の対象となる経費は、以下のようなものが対象となる上、助成事業に採択される前に契約しても、補助事業の対象期間の支出であれば対象経費として認められる点もとても使いやすいものとなっています。
①従業員人件費、②賃借料、③専門家謝金、④特許などの産業財産権出願・導入費、⑤広告費、⑥備品費等で幅広い経費
本創業助成金は東京都中小企業振興公社が公募しており、残念ながら、東京都に主たる事業所がなければ申請できません。しかし、創業予定者だけではなくすでに創業された方でも助成が受けられることができ、助成額も他の創業補助金に比べて金額も助成率も高いため、条件が当てはまる方は創業助成金の活用をおススメします。
手厚い助成を受けられる創業助成金ですが、申請には、申請書類の一つとして事業計画書を提出すること、指定された16 の創業支援事業のひとつを利用していることが求められます。これは東京都が、創業者支援にはモデルになりうる事業に対して資金面の支援を行うだけではなく、実現性の高い事業計画を立案すること、さまざまな創業支援を包括的に活用することによって、創業の成功率を高めてものとしていることを示しています。
創業支援事業には16の項目がありますが、主なものを大別すると3つに分けられます。①実現性の高い事業計画を作成するための支援、②創業支援施設への入居、③特定の融資制度による融資。
創業される方は、「女性・若者・シニア創業サポート事業」の融資利用や、東京都中小企業制度融資(創業)を利用されているケースも多く、③の条件を満たすため、創業支援制度の利用は大きなハードルにはならないと思います。
創業をされる方は融資だけでなく、創業支援施設の利用や事業計画策定支援も活用を検討されることをおススメします。創業支援施設への入居は、同じ立場の創業者との人脈にもつながりますし、インキュベーションマネージャーによる客観的な意見は大変参考になります。また、しっかりした事業計画は創業の成功率を高めことになるだけではなく、思ったとおりに事業が進まなかった場合にも計画との乖離を把握することで、問題の把握がしやすくなります。
創業の成功率を高めるには、融資による資金の確保だけではなく、しっかりとした事業計画、創業後のサポートも重要です。創業助成金の検討を機会に、助成金以外の支援策の活用も検討されてはいかがでしょうか?
手厚い助成が受けられる創業助成金は人気が高く、採択率は公表されていませんが、30~40%程度と言われています。創業関連の補助金や助成金の中でも採択されにくい事業となっています。では、どうすれば採択率を高めることができるのでしょうか?
創業助成事業は東京都における創業のモデルケースの発信や事例の発掘を目的として行っています。採択率を高めるためには、事業の目的に沿ってモデルケースや事例になりうるような革新性が高く、実現性の高い、完成度の高い事業計画を立てる必要があります。「完成度の高い事業計画」とは、具体的には、募集要項に記載されている「審査における主な視点」を充足できる事業計画です。主な視点として次の6つの項目があげられます。
①内容の明確性
②マーケティングの有効性
③事業の実現性
④事業実施の効果・意義
⑤資金調達の適格性
⑥申請経費の適格性
それぞれの内容を確認していきましょう。
①の内容の明確性では、創業者の強みや市場環境の状況を踏まえながら、具体的にどのような価値を誰に対してどうやって提供していくか、という点を明確に伝えていきます。
②のマーケティングの有効性では、ターゲットとする顧客とその顧客への提供価値を明らかにしていきます。良い商品やサービスがあれば自然と売り上げが伸びていくわけではないので、顧客へ商品やサービスを伝える集客方法についても言及するとよいでしょう。
③の事業の実現性では、事業の展開に必要な準備、事業を営んでいく上でのオペレーションを具体的にイメージします。例えば、飲食店であれば提供するメニューのほかに、店舗の借り入れや、厨房設備の準備、従業員などが必要となります。それらを具体的にどのように準備していくか、店舗をどのように運営していくかを記載するとよいでしょう。
④の事業実施の効果・意義は少しわかりにくいかも知れませんが、これまで地域になかった事業が生まれて既存企業との相乗効果が発揮される、新たな雇用が創出されるといった内容がよいでしょう。
⑤の資金調達の適格性、⑥の申請経費の適格性は、資金の調達や支出の内容が事業にとって必要不可欠な内容であり、その金額が適切であれば問題ないでしょう。
以上のような内容が、もれなく適切に記載されていれば採択率は大幅にアップしたといえるでしょう。創業される方々の事業計画の専門知識を持ち合わせていないケースがほとんどでしょう。その場合は金融機関や支援機関など、専門家に素直に相談させることをおススメします。専門家への相談は、創業助成金の採択率を上げるだけではなく、不確実性の高い創業期を乗り切るために大きな助けになるでしょう。
東京都創業助成金では手厚い助成を受けられるため、創業予定者や創業間もない経営者の方は活用を検討されるとよいでしょう。申請に当たって最も重要なのは事業計画です。申請を契機に事業計画を改めて整理してはいかがでしょうか?
コンサルティング・ビジネス研究会 執筆チーム(中小企業診断士)
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