設備投資による財務/税務の効果

本来、設備投資の決定は、会社の経営判断のなかでも重要なもののひとつです。会社の財務状況や成長に対する投資が効果について、減価償却や税金への影響など、会計、財務の視点で説明することができれば、融資の承認も受けやすくなります。

設備投資のための会計、財務の視点

目次
1.設備投資で生じる減価償却費

2.減価償却費は設備投資借入の返済原資

3.減価償却費の税金への効果

4.まとめ

1.設備投資で生じる減価償却費

 設備投資を検討する際には、経費と投資の違いや減価償却についての理解が基本です。
当期分の事務所家賃は当期の「経費」ですが、当期に購入した設備投資資金は、直接には当期の「経費」にはなりません。

例えば、初年度期初に10百万円の設備投資を行い、その設備の耐用年数が10年とします。初年度の10百万円は機械・装置などの「資産」として計上され、その後、初年度を含めて10年間、毎年1百万円が「経費」として会計処理されます。
馴れるまでは頭に入りづらい考え方ですが、10回分の回数券を初年度に一括支払いで購入することをイメージしてみてください。

毎年、回数券を1枚使うため1百万円分の資産(回数券)が目減りし、使用された回数券1百万円分がその期の営業活動として使用された「経費」として処理されます。この毎期の経費が減価償却費です。
初年度だけに経費10百万円を計上してしまうと、初年度と残り9年間の決算書上の損益にぶれが生じて、毎年の経営成績が正しく示されないため、このような処理が行われます。

2.減価償却費は設備投資借入の返済原資
そして、この減価償却費の効果として知っておくべき重要なポイントは、キャッシュ(現預金)の動きです。上記の例では、初年度に10百万円のキャッシュを一括して支払っていますので、毎期、回数券を使うときにはキャッシュの支払は発生しません。
 減価償却費以外の経費の場合、損益計算書(P/L)上、経費1百万円として計上されていれば、ほぼ同額のキャッシュが支払われています。しかし、減価償却費の場合には、損益計算書(P/L)上、減価償却費1百万円として計上されるのですが、キャッシュ(現預金)の支払いがありません。
 つまり、損益計算書(P/L)上、同じ利益額1百万円が示されていても、減価償却費がある場合は、そうでない場合と比較して、企業内に減価償却費1百万円のキャッシュが多く留まっていることになります。これは、先に説明したとおり減価償却のルールが、期間損益の平準化のため、実際のキャッシュの流れとは違うタイミングで経費処理を行っていることから発生するのですが、結果としては、初年度の投資額を毎期に回収していることになります。
 設備投資の返済原資の基本は毎年の儲けである「当期純利益」なのですが、それに加えて、「減価償却費」も重要な返済原資(自己資金)のひとつとして認識されています。
3.減価償却費の税金への効果

減価償却費によるもうひとつのメリットが節税効果です。
1百万円の経費を計上すると、利益がその経費の1百万円分圧縮されることになりますから、相当分の税額が少なくなります。実効税率を30%とすると、減価償却費を計上している期間、年間30万円の税負担が軽減されることになります。節税のために不要な経費を積み増すことは社外流出のほうが大きくなるため推奨されませんが、必要な投資を行う際に、節税の効果を狙うことは有効なことです。上記の例では、設備投資によって、減価償却費1百万円と節税効果による30万円がキャッシュとして手元に残ることになります。

優遇税制や補助金などを活用するとさらに大きな効果も期待できます。

まとめ

大型で長期となりがちな設備投資への融資は、減価償却や節税効果などを勘案すれば、返済計画も立てやすく、必ずしもハードルが高い取引ではありません。設備物件自体に担保価値があればさらに有利です。
あとは、需要予測、売上計画が現実的で、過大投資になっていないことについて、慎重に検討した結果を伝えることで、金融機関との対話が深めては如何でしょう。

執筆者

小林 昭文(中小企業診断士)

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