中東情勢によるコスト上昇を乗り切る「国の支援策」3選

今年の春以降、中東情勢の影響により、仕入コストや光熱費の増加などに悩む事業者様も少なくありません。こうした状況を受け、国は中小企業向けの支援策を実施・拡充しています。
今号では、資金調達を支える2つの制度と成長投資を支える補助金をご紹介します。
コスト増などにお悩みの事業者様へのご案内に、ぜひご活用ください。

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目次
1.中東情勢は、中小企業にどう影響しているのか

2.今号で取り上げる3つの支援策

3.まずは「特別相談窓口」や専門家へご相談を

1.中東情勢は、中小企業にどう影響しているのか

2026年春には、中東情勢の緊迫化により、北海ブレント原油価格が一時1バレル100ドルを超えました。
その後、相場はいったん下落したものの、7月にも中東情勢や原油輸送への懸念を背景に、再び100ドルを上回る場面があり、価格変動の大きい状況が続いています。


原油価格や輸送コストの上昇は、燃料費・原材料費・物流費などを通じて、中小企業の収益を圧迫するおそれがあります。
今後の情勢と仕入価格への影響を、引き続き注視する必要があります。

国は、こうした影響を受けて困難に直面する中小企業のために、日本政策金融公庫の各支店や、全国の信用保証協会・商工会・商工会議所などに「特別相談窓口」を設置し、さまざまな支援策を実施しています。

<中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口>
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/kokusai_josei/dl/madoguchi.pdf

今号で取り上げる支援策は3つです。
借入を支える①セーフティネット貸付と、②セーフティネット保証5号、設備投資を支える③新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。
事業者様の状況に応じて、たとえば次のように活用できます。


◆燃料費の高騰に悩む運送業
→「セーフティネット貸付」で当面の資金を借り入れることができます。
一定の要件を満たす場合は、金利の優遇も受けられます(支援策①)

◆追加の資金調達を検討している飲食業
→「セーフティネット保証5号」を活用し、追加の借入を検討できます(支援策②)

◆新商品の開発で活路を開きたい金属加工業
→補助金を活用した設備投資を検討できます(支援策③)

それでは、各制度の具体的な内容を、順に見ていきましょう。

2.今号で取り上げる3つの支援策

①一定要件で金利引き下げ「セーフティネット貸付」

セーフティネット貸付は、日本政策金融公庫などが実施する融資制度です。
社会的・経済的環境の変化などにより、一時的に業況が悪化している事業者が、
運転資金や設備資金の融資を受けることができます。

・貸付限度額:

7,200万円(国民生活事業)
7億2,000万円(中小企業事業)

・返済期間 :

運転資金10年以内
設備資金20年以内

利用に当たっては、社会的・経済的環境の変化などにより一時的に業況が悪化しているものの、中長期的には業況の回復・発展が見込まれることが前提となります。

そのうえで、たとえば「最近3か月の売上高が前年同期または前々年同期に比べて5%以上減少しており、今後も売上減少が見込まれること」など、複数ある要件のいずれかを満たす必要があります。

一方、こうした売上高の減少率などの数値要件を満たしていない場合でも、一時的に業況が悪化し、資金繰りに著しい支障が生じている、またはそのおそれがある場合には、融資の対象となる可能性があります。

さらに、前述の資金繰りに関する要件に該当する事業者が、原材料・エネルギーコストの増加や、取引・生産の減少・停止などの影響を受け、最近の売上高、総利益率(粗利率)または営業利益率が前期に比べて5%以上減少している場合には、一定の条件のもとで金利が優遇されます。

国民生活事業では基準となる金利より低い金利が適用され、中小企業事業では基準利率から年0.4%引き下げられます。

※制度の内容や適用される金利は、今後変更される可能性があります。
活用をお考えの場合は、早めに日本政策金融公庫へご相談ください。

<国民生活事業>
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html
<中小企業事業>
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m_t.html

②別枠での借入保証「セーフティネット保証5号」

金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が金融機関に対して中小企業者の債務を保証する仕組みが「信用保証」です。
このうち「セーフティネット保証5号」は、業況が悪化している指定業種に属し、売上高減少などの要件を満たす中小企業者を対象としています。


通常の保証限度額2.8億円とは別枠で、最大2.8億円の保証枠を利用できます。
信用保証協会による保証割合は、借入額の80%です。
対象となる指定業種には、製造業や運送業など、幅広い業種が含まれています。

【保証限度額】

※特別小口保証は、従業員20人以下(卸売・小売・サービス業は5人以下)など、一定の要件を満たす個人事業者等が対象。

2026年7月の指定に当たっては、中東情勢の影響を踏まえた臨時の業況調査が行われ、指定業種は520業種から583業種に増加しました。

なお、対象となるかどうかは、日本標準産業分類の細分類番号により判定されます。事業内容によっては対象外となる場合もありますので、申請前に最新の指定業種一覧をご確認ください。
※指定業種は原則として四半期ごとに見直されますので、現在の指定業種に該当する事業者様は、早めの認定申請をおすすめします。

「既存の保証枠がいっぱいで、追加の借入が難しい」という場合でも、別枠の保証を利用できるため、追加の融資を検討しやすくなります。

利用するには、市区町村の認定を受ける必要があります。
申請先は、法人の場合は登記上の住所地または事業実態のある所在地を、個人事業主の場合は事業実態のある所在地を管轄する市区町村です。

市区町村の認定を受けた後も、金融機関と信用保証協会による審査があります。
全国の「特別相談窓口」でも相談を受け付けています。

<公式サイト:中小企業庁>
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.html

③「攻め」で乗り切る補助金

借入による資金繰り対策と併せて注目したいのが、新たな事業展開や設備投資を支援する補助金です。

「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、2026年6月29日に第1回公募が始まった補助金です。

本補助金には3種類の枠があり、革新的な新製品・新サービスの開発や、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、さらには海外市場開拓(輸出)に向けた体制強化などが支援の対象となります。

・補助上限額:事業枠や従業員規模、賃上げ特例の適用状況に応じて異なり、最大9,000万円(※)
・補助率  :事業枠・事業者規模・特例の適用状況に応じて1/2または2/3

※最大9,000万円となるのは、新事業進出枠またはグローバル枠において従業員が101人以上で、賃上げ特例を適用する場合です。
賃上げ特例とは、一定水準以上の賃上げに取り組むことで、補助上限額が引き上げられる制度です。

この補助金を利用するには、補助事業終了後3~5年の事業計画において、付加価値額の増加、一人当たり給与支給総額の増加、事業場内最低賃金など定められた要件を満たす必要があります。

このうち、賃上げに関する二つの要件を達成できなかった場合には、補助金の一部または全額の返還義務が生じることがあります。
これらの要件を踏まえて申請内容が審査され、採否が決定されます。

今回の公募では、中東情勢による原油由来製品・資材の供給途絶や高騰、それに伴う事業の中止などの影響を受けた事業者が、今後、市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野へ進出する取組は、審査項目の一つである「政策面」で評価されます。

※第1回公募の申請受付期間は9月30日~10月30日18時です。
申請される場合は、公式サイトで最新情報をご確認ください。

<公式サイト:中小企業基盤整備機構>
https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/

3.まずは「特別相談窓口」や専門家へご相談を

影響の内容や置かれた状況により、必要な支援策は異なりますので、お困りの事業者様はまず「特別相談窓口」での相談をご検討ください。
相談の際は、売上の増減などが分かる資料を準備しておくと、相談がスムーズに進みます。

また、コンサルティング・ビジネス研究会のウェブサイトでも各種補助金の申請支援についてご案内しています。
当研究会には、採択の実績やノウハウが豊富なコンサルタントが多数在籍していますので、「補助金に興味はあるが、事業計画書の書き方がわからない」といった課題をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

<公式サイト:補助金・助成金申請支援サービス>

執筆者

コンサルティング・ビジネス研究会 荒川 貴子(中小企業診断士)

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