2025年版ものづくり補助金の最新情報を徹底解説

中小企業者にとって、毎年注目される「ものづくり補助金」ですが、2025年は大きく見直され、これまでとは異なる点が数多くあります。

今回のメルマガでは本補助金について、従来との違いや最新の動向をわかりやすく整理し、中小企業者がどのように活用できるのかを詳しく解説します。

目次
1.2025年の制度改正

2.21次公募で明確になった点

3.とめ

1.2025年の制度改正

2025年は、足元の賃上げの状況や企業規模に応じた投資ニーズに対応するため、以下の見直しが行われました。

(1) 申請枠の整理
2024年のものづくり補助金では「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の3つの枠があり、製品・サービス高付加価値化枠には「通常類型」「成長分野進出類型(DX・GX)」の2類型がありました。しかし、申請枠の違いが分かりにくく、利用者に混乱を与えていました。2025年は「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の2つに整理され、シンプルな制度に改められました。

(申請枠の違い)

2024年 2025年
省力化(オーダーメイド)枠

 

廃止

但し、生産プロセス等の省力化を支援する「中小企業省力化投資補助金[一般型]」が創設されました。

製品・サービス高付加価値化枠

・通常類型

・成長分野進出類型(DX・GX)

製品・サービス高付加価値化枠
グローバル枠 グローバル枠

(2) 基本要件の厳格化

国の政策として、賃上げや働き方改革が強く求められている中、本補助金にもその流れが反映され、以下の変更がありました。

・給与支給総額の年平均成長率の要件が「1.5%以上増加」から「2.0%以上増加」
に変更

・従業員21名以上の場合、「一般事業主行動計画」の策定・公表が必要となり
ました。

一般事業主行動計画とは、従業員が仕事と子育ての両立を図るための雇用環境や、子育てをしていない従業員を含めた多様な労働条件を整備する、具体的な取り組みを策定するものです。

これらの変更を踏まえた基本要件は以下のとおりです。申請する事業者は、これらの要件を満たす3~5年の事業計画に取り組む必要があります。

【基本要件】

①付加価値額の増加:

年平均成長率を3.0%以上増加

②賃金の増加:

・給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加

  または

・1人あたり給与支給総額の年平均成長率を、事業を行う都道府県の最低賃金の
直近5年間の年平均成長率以上

③事業所内最低賃金の水準:

事業を行う都道府県の最低賃金より30円以上アップすること

④従業員の仕事・子育て両立支援(従業員21名以上の場合のみ):

次世代育成支援対策推進法における「一般事業主公表計画」の作成・公表

※②③の要件が未達成の場合、補助金の返還義務があります

※④の要件は、応募時点で達成する必要があります

(3) 支援措置の充実化

① 従業員50人を超える企業への補助上限額の拡大

製品・サービス高付加価値化枠で、21人以上の従業員区分が「21~50人」と「51人以上」に分けられ、従来1,250万円だった補助上限額は、従業員が21~50人の企業は1,500万円に、従業員が50人を超える企業は、2,500万円に拡大されました。企業規模に応じた支援が受けられるようになったと言えます。

② 賃上げに取り組む事業者への特例創設

最低賃金引上げに取り組む事業者に対し、補助率引上げ特例が創設されました。中小企業の補助率は2分の1ですが、2023年10月~2024年9月の間で3か月以上、都道府県別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いる場合は、3分の2に引き上げられます。

③ 収益納付の廃止

従来は、補助金を活用した事業で収益が得られた場合に、国に一部を納付する必要がありました(「収益納付」といいます)。2025年からは収益納付が廃止されました。これにより、補助金を活用した設備投資の利益を速やかに再投資に回せるようになり、成長への取組が行いやすくなったと言えます。

(4) 審査項目の刷新

従来は「技術面」「事業面」「政策面」といった審査基準でしたが、2025年は「経営力」「事業性」「実現可能性」「政策面」といった審査基準が示されました。単なる技術的な新規性よりも、経営全体の成長戦略との整合性や実現可能性の高さが評価されると言えます。

(5) 申請方法の変更

従来は、事業計画書をA4サイズで10ページ以内のPDFにまとめ、電子申請システムにアップロードしていました。2025年からは、事業計画の本文を電子申請システムに直接入力し、その補足となる図や画像をA4サイズで3ページ以内のPDFにまとめ、添付することになりました。より簡潔な事業計画が求められるようになりました。

2.21次公募で明確になった点

2025年の制度改正は2月に公募開始された19次公募から実施されています。現在、受付中の21次公募で大きな変更点はありませんが、不明瞭だった以下の点が明確化・強調されています。

(1) 従業員数が0名の場合は申請できない

従業員数が0名の場合、基本要件②(賃金の増加)の対象となる給与が存在しないことから、本補助金に申請できないことが明記されました。

(2) 他の補助金の実績を申告しない場合は不採択

過去に交付決定を受けた、または現在申請している他の補助金を申告しない場合は、不採択となることが明記されました。

(3) 補足資料PDFのページ数上限の拡大

前述のとおり、事業計画の本文を電子申請システムに直接入力し、補足となる図や画像をPDFファイルで提出することになりました。このPDFファイルのページ数上限が3ページから5ページに拡大されました。ただし、超過や不備がある場合は審査対象外となる旨も明記されましたので、注意が必要です。

3.  まとめ

2025年のものづくり補助金は、5つの大きな変更がありました。

・申請枠の整理

・基本要件の厳格化

・支援措置の充実化

・審査項目の刷新

・申請方法の変更

これにより、従来以上に企業規模や経営方針に応じた活用が可能になりました。一方で、事業計画の作成力や、賃上げ、仕事と子育ての両立の取組が求められるため、単なる申請書の作成では採択が難しくなってきています。

「自社の従業員規模でどのくらい補助金額を得られるのか?」

「賃上げ特例を満たす見込みがあるのか?」

こうした点を早めに検討することが、採択の可能性向上と事業成功につながります。CB研では、補助金申請にとどまらず、経営全般までトータルでサポートしております。ものづくり補助金に関心のある事業者様は、ぜひご相談ください。

執筆者

コンサルティング・ビジネス研究会  箱山 玲(中小企業診断士)

 

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