このコラムでは、事業承継によって事業を引き継いだ中小企業が、国の補助金「事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)」を活用して、「ローカル・ゼブラ企業」として飛躍するための方法をご説明します。
(※)本補助金の13次公募(2025年11月28日締切)の内容に基づいて執筆しました。
| 目次 |
| 1.「ローカル・ゼブラ企業」とは?
2.事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)とは? 3.ローカル・ゼブラを目指す後継者こそ使いたい補助金! 4.ローカル・ゼブラ企業を目指すための、本補助金の活用ステップ |
この数年、国が育成を進めている「ローカル・ゼブラ企業」への注目が高まっています。
ローカル・ゼブラ企業とは、「ビジネスの手法で地域課題の解決にポジティブに取り組み、社会的インパクトを創出する企業」とされています。いいかえれば、「地域課題の解決に向けたビジョンに基づいた斬新な事業を行い、成果(インパクト)を多く出して地域に貢献し、事業としても高い成長を目指す企業」のことです(※1)。
ローカル・ゼブラ企業の事例としては、以下があります(※2)。
- (株)アキウツーリズムファクトリー様(「地域の魅力を引き出し、持続可能な観光を創造する」をモットーに、仙台市秋保地区を拠点として、飲食業・地域プロデュース業などに取り組む)(※3)
- (株)雨風太陽様(世界初の食べもの付き情報誌「東北食べる通信」を創刊した高橋博之氏が創業し、「都市と地方を、かきまぜる」ため、産直・農家への宿泊体験・地方留学などに幅広く取り組む)(※4)
中小企業がローカル・ゼブラ企業として認知されるためには、以下の5段階で、地域課題の解決に向けた事業に取り組むことが考えられます。
認知が高まることで、行政や他の企業等とのコラボレーション、金融機関からの資金調達、住民の参加といった機会が増え、更なる成長への好循環につながります。
| ① ビジョンを明確に打ち出し、地域の人々と共有する
② ビジョン達成に向けた解決策と道筋を示す ③ ②の解決策を具体化するための斬新な事業を行う ④ 事業による成果を測り、公開する ⑤ ④の結果に基づき、地域の関係者との対話と連携を進め、更なる成長につなぐ |
※1画像は中小企業庁「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」(2024年3月)より引用。
※2 ローカル・ゼブラ企業は、本コラムで挙げた2社のほか、多くの事例があります。※1の資料に加え、関東経済産業局「ゼブラ企業・支援拠点事例集」(2025年5月)もご覧ください。
※3 アキウツーリズムファクトリー様HP:https://atfcompany.jp/
※4 雨風太陽様HP:https://ame-kaze-taiyo.jp/



このようなローカル・ゼブラ企業を目指す後継者の方々にとって大変役立つ補助金が、「事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)」です。
本補助金は、会社や事業を引き継ぐ中小企業(会社・個人事業主)が、引継ぎに伴って生産性向上のために行う、設備投資等の費用を支援するものです。主な内容は以下のとおりです。
| 補助対象事業 (ポイント) |
① 本補助金の締切から5年以内に事業承継を行う予定であること
②親族間の事業承継か、一定期間引き継がれる企業の役職員であった者への事業承継であること(M&Aによる事業承継は対象外) |
| 補助上限額 | 最大1,150万円(原則800万円+賃上げ加算200万円+別に廃業費150万円) |
| 補助率 | 原則2分の1(小規模事業者は補助金800万円まで3分の2) |
| 補助対象経費 | ①事業費(設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費)
②廃業費(上限150万円)(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費) |
本補助金の仕組みの詳細は、Consultria Webページ内の、事業承継・M&Ah補助金(事業承継促進枠)ページをご覧ください。
本補助金は、対象者が「地域経済に貢献している中小企業者等」に限られていることが特徴的です。
「地域経済に貢献している」例として、公募要領では以下を挙げています(太字筆者)。
| ・地域の雇用の維持、創出等により地域経済に貢献している。
・所在する地域又は近隣地域からの仕入(域内仕入)が多い。 ・地域の強み(技術、特産品、観光、スポーツ等)の活用に取り組んでいる。 ・所在する地域又は近隣地域以外の地域への売上(域外販売)が多い(インバウンド等による域内需要の増加に伴う売上も含む)。 ・新事業等に挑戦し、地域経済に貢献するプロジェクトにおいて中心的な役割を担っている。 ・上記によらずその他、当該企業の成長が地域経済に波及効果をもたらし、地域経済の活性化につながる取組を行っている。 |
また、審査の際の着眼点にも、「承継予定者による生産性向上等に係る取組が、自社の成長及び地域経済等の発展等に資するものであること」とあります。よって、地域経済への貢献を、審査員により強くアピールすることができれば、採択の可能性が高まります。
このように、地域経済に貢献する企業を優遇する本補助金は、ローカル・ゼブラ企業を目指す後継者の方々のためにこそ存在すると言ってもいいほどです。
後継者の方々が抱く
「引き継いだからには事業を大きく成長させたい」
「地域社会のお役に立ちたい」
といった志の実現に向け、ぜひとも活用をご検討ください。
ローカル・ゼブラ企業を目指すための本補助金の活用は、概ね以下のステップで進めることが考えられます。
| ① ローカル・ゼブラ企業としての構えを作る(地域課題解決のためのビジョン・解決策・道筋を示す)
② ①を具体化するための、本補助金を使った斬新な事業(補助事業)の骨子と、そのための設備投資計画を作る ③ 本補助金の申請時に、①・②を「事業承継計画書」に盛り込み、地域経済への貢献度の高さをアピールすることで、採択を目指す ④ 採択後、補助事業を実施し、その成果を計測して内外に示す ⑤ ④をもとに、地域の関係者との対話と連携を進めて、補助事業をより地域に役立ち、成長にもつながる内容に進化させる |
上のステップは、ローカル・ゼブラならではの「構えを作る」「成果を計測」「地域の関係者との対話と連携」などが入るので、補助金だけを申請する場合に比べて複雑です。また、構えを作り、成果を計測するためには、専門的なノウハウも求められます。
CB研では上のステップを一貫して支援することにより、事業承継をきっかけとした、ローカル・ゼブラ企業への飛躍を支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
コンサルティング・ビジネス研究会 多賀 俊二(中小企業診断士)
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