補助金は採択後も重要!交付申請や実績報告のトラブル防止策

 2022年12月に「令和4年度第2次補正予算」が政府案どおり国会で可決され、成立しました。中小企業支援策においては、おなじみの補助金事業に関して、次のとおり2023年度実施分が前年度と同等以上の金額で予算化されています。

事業名

予算額

具体的な補助金

中小企業等事業再構築促進事業 5,800億円
※R3補正予算では6,123億円
・事業再構築補助金
(各種特別枠あり)
中小企業生産性革命推進事業 4,000億円

※国庫債務負担分を含む

※R3補正予算では2,001億円

・ものづくり補助金

・小規模事業者持続化補助金

・IT導入補助金

・事業承継・引継ぎ補助金

コロナ禍に加え、物価高騰・原油高の影響もあり、業種業態を問わず多くの中小企業が苦しい経営環境下にあります。そのような中で政府は、「攻めの経営」や「大胆なチャレンジ」を行う中小企業に対し、積極的な支援を継続・強化する姿勢を明確にしました。
引き続き中小企業の成長にとって、補助金は重要な手段となり得ます。しかし、事業計画が採択されることばかりに注力するあまり、採択後の補助事業の実施や報告に不備や不手際があり、せっかくの補助金を受け取る権利を得ながら、減額や不支給となるケースも生じています。これまで本メールマガジンでは、「採択されるためのコツ・ポイント」について何度かお伝えしてきました。今回は、採択後に補助事業を正しく完遂し、確実に補助金を受け取るために理解しておくべき「トラブルの可能性とその防止策」についてお伝えします。

目次
1.採択後の事務手続き

2.交付申請のトラブルと防止策

3.補助事業実施のトラブルと防止策

4.実績報告のトラブルと防止策

5.まとめ

1.採択後の事務手続き

まず、採択されてから補助金を受け取るまでの流れを正しく理解しましょう。「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」における採択から補助金を受け取るまでの流れは下表のとおりです。

 

事業再構築補助金

ものづくり補助金

A

採択結果発表・採択通知(受領)

B

交付申請(提出)

審査

C

交付決定通知(受領)

D

補助事業開始

状況の報告

遂行状況報告

中間監査 ※稀に

中間監査(場合により)

補助事業完了

 ↓

E 実績報告(提出)

審査・実地検査(場合により)

確定検査(実施検査)

F

補助金額確定通知(受領)

G

精算払請求(提出)

H

補助金振込(受領)

I

事業化状況報告(年1回)

※AからHまでの期間は、およそ10〜14ヶ月です。

このうち、「(B)交付申請」「(D)補助事業実施」「(E)実績報告」において不備や不手際が生じやすいため、主なトラブルの例と防止策について説明いたします。

2.交付申請のトラブルと防止策

 

トラブル(例) 防止策
証拠書類の内容 見積書と相見積書の内容が1文字でも異なると、同一内容ではないと指摘される可能性があります。 見積書と相見積書の内容は、品名・型式とも原則1字1句完全に揃えます。

※新字体/旧字体も統一しましょう。

見積書や相見積書に有効期限が記載されてないと、「有効期限1ヶ月」とみなされます。交付申請に使えないことや、発注時に再度見積書を取得する必要が生じてしまいます。 見積書や相見積書には必ず有効期限を「●年●月●日」や「見積から●ヶ月以内」等の形で明示します。また、有効期限は3~6ヶ月程度を確保します。
相見積書が取れないときに提出する「業者選定理由書」に、「この業者と信頼関係がある」「アフターサービスがよい」「他のところから購入すると高額になる」等の理由を示すと、認められません。 「業者選定理由書」に記載する理由は必ず、国内ではその業者以外から購入する方法が一切存在しないこと等を示します。
経費(補助
金)の金額
「業者選定理由書」に記載する理由は必ず、国内ではその業者以外から購入する方法が一切存在しないこと等を示します。 「業者選定理由書」に記載する理由は必ず、国内ではその業者以外から購入する方法が一切存在しないこと等を示します。
事業計画作成時から時間が経ち、経費が増額になったとしても、補助金額は増額されません。 一部の経費が増額になっても、経費の総額が採択時の補助金額以下となる範囲で他の経費と調整(増減)することは可能です。(場合により、変更申請が必要)
事務局
対応
事務局の電話担当者が十分理解しないまま、間違った説明をすることがあります。担当者が問題と認識する経費について、交付申請時点で対象経費から削除するよう求められるケースもあります。 事務局担当者の説明を鵜呑みにせず、手引書を熟読の上、冷静に確認します。場合により、担当者の上司に交代するよう要求します。
3.補助事業実施のトラブルと防止策

 

トラブル(例)

防止策

証拠書類の時系列の整合性 証拠書類の時系列に不整合があると、実績報告で事務局から指摘されます。 全ての証拠書類の日付を明示し、以下の順番を必ず遵守します。

・見積依頼書
≦(相)見積書≦発注書

・交付決定通知書
≦発注書≦発注請書
≦納品書≦検収書

・発注請書≦請求書
≦振込依頼書等
≦通帳の支払記録

交付決定より先に発注してしまうと、その経費分の補助金は減額となります。 必ず交付決定後に発注します。そのため、交付決定後の日付で発注書を作成し、その日付以降で発注請書を取得します。

※事前着手の承認を得ている場合を除きます。

証拠書類の内容 発注書以降の記載内容が見積書と1文字でも異なると、同一内容ではないと判断される可能性があります。 発注書以降の記載内容は、品名・型式とも1字1句見積書と完全に揃えます。

※漢字の新字体/旧字体も統一します。

経費の支払い 銀行振込以外の方法で支払うと、必要となる証拠書類を揃えられないリスクが生じます。 原則、自社名義の銀行口座から振込で支払いを行います。現金やカードによる支払いが認められるケースもありますが、余分な証拠書類の作成が必要となります。
振込手数料の全額または一部を、発注先の負担として支払額から減額すると、補助金も減額となります。更に、再計算や実績報告書類の修正が煩雑です。 振込手数料は全額自社負担としておきます。
補助事業実施期限までの日付で「通帳の支払記録」が確認できないと、その経費分の補助金は減額となります。 支払いをやり直すことや遡ることはできません。特に支払いについては、上記の時系列を遵守します。

※事前着手の承認を得ている場合、承認内容に 従って、先に支払っても問題ありません。(指定日以降)

4.実施報告のトラブルと防止策

 

トラブル(例)

防止策

事業化準備状況 補助事業で導入した設備を用いてすでに収益事業を行っているという報告をすると、補助金の一部について返還を求められる可能性があります。 実績報告では、「補助事業終了時点で事業化の準備が整った」という内容にとどめます。

 

写真 提出する写真について、補助事業で導入した設備の一部が写っていないと、補助対象として審査で認められないことがあります。 補助事業で導入した設備すべての写真を提出します。写真を添付する台帳(Excel)の枚数が増えても問題ありません。
所定のラベルが貼付されていない場合や、証拠書類・報告書に記載した管理IDと異なるラベルが貼付されている場合は、審査で認められません。 実績報告の際に提出する全ての書類において、管理IDを一致させます。
事務局対応 上記2.交付申請のトラブルと同じ。 上記2.交付申請の防止策と同じ。
4.まとめ

以上のように、補助金事務局のルールをしっかり理解した上で、「従来の商習慣等にとらわれず補助事業をキッチリ進めること」が、補助金を受け取る為の近道です。補助金用の証拠書類をわざわざ作成することも、一見ムダには見えますが時には割り切って行うことも必要です。一方で、補助金事務局の担当者は、ルールに対する理解が不足している場合もあるため、何でも素直に従ってしまうと、補助金が減額されるリスクも考えられます。しっかりと説明・交渉し、不利益を被らないよう留意することも重要です。コンサルティング・ビジネス研究会では、補助金の申請支援について原則フルサポート(上表のB~H)で行っております。どうぞご安心の上ご相談ください。

執筆者

コンサルティング・ビジネス研究会 加藤 弘之樹(中小企業診断士)

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