ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金等の補助金スキーム活用は、中小零細企業の経営の安定化・高度化や成長を図る上で大きなメリットになります。一方で、これら補助金の採択率は30%~40%と決して高い数字ではありません。本稿では、採択を勝ち取るための申請書作成のポイントを解説します。
目次 |
1.補助金申請の難しさとは何か:紙のみで伝えることの難しさ
2.読み手(審査員)に何を伝えなければならないのか:審査ポイントの把握 3.読み手(審査員)にどう伝えるのか:伝わる文書作成のコツ 4.まとめ |
補助金はどうやったら採択されるでしょうか。確答はできませんが、少なくとも貴社の申請書が審査員にとって魅力的に写り、彼らに貴社は補助金が採択されるに十分であることを認めさせなければいけないことに異論はないでしょう。
有識者会議などいくつもの工程が入るとはいえ、まずは貴社の申請書を最初に見る審査員の目を突破しなければ、そこで不採択となってしまうからです。そして、実はここに、補助金申請の最大の難しさがあります。
普段の仕事内容を想像してください。商談に行くとき、見積書や何らかの資料を持参するが、無言でそれのみで話をすることがあるでしょうか。資料に基づき、会話をし、その中で結論が決まるはずです。補助金申請ではこれを全て紙ベースで行わなければならず、ここに補助金申請の難しさが集約していると言っても過言ではありません。普段、不足やわかりにくい点があれば、口頭で補足が行うという、ビジネスで当たり前のことが、補助金申請では行えないのです。
例えば、100点の事業計画があっても、その良さが申請書を通じて30%しか審査員に伝わらなければ、50点の事業計画で80%を審査員に伝えることのできた申請書には負けてしまい結果として不採択になってしまうこともあり得ます(100点×30%=30点<50点×80%=40点)。勿論、口頭での補足が行える通常の商談では、このようなことは想定しにくいことです。
では、審査員は各申請書をどのように判断するのでしょうか。判断基準は残念ながら外部には公開されていません。従って、ここからは私の想像になりますが、国の、しかも税金が使われる事業である以上、各審査員に判断を丸投げということは客観性や主観的なバラつき排除の観点から考えにくいです。何か具体的な審査項目や審査の観点に従った採点・判断がなされていると考えるのが自然です。
実は、これらの根拠は、各補助金の要綱に「審査項目」や「審査の観点」としてしっかり記載されています。具体的な申請作成書作成の前に、これらをしっかり確認することが必要不可欠となります。
申請書を実際に書くこととなる中小零細企業にとって、このことは大きなヒントになり得ます。相手が何を聞きたいのか、知りたいのかわからずプレゼンをするよりも、何を知りたいのかどんなポイントを見るのかがわかっていれば、申請書作成時に盛り込むべき内容の目安となります。
申請書のみでの審査である補助金であれば、提出したもののみが唯一の審査員にとっての判断材料となります。提出後に、こういう意味であった、こういう観点で理解してもらいたかったと忖度を願っても後の祭りです。作成の際に、何が審査ポイントとして見られるかを知り、そのために何を伝えるか何を書くべきかを選択することが、採択のためには必要となります。
ここまでの議論を踏まえ、本節では、審査員に伝えたいことを文章だけで伝えるかについて、押さえておくべきポイントを二点解説します。
● コツ1:骨組みとしてのアウトライン作成
貴社は、申請書に記載する内容が決まった段階で、いきなり書き始めてはいないでしょうか。日々文書を書きなれている記者や作家でもない限り、流れに任せて書いた文章が理路整然として読みやすいということは稀です。各補助金の様式に応じて、まずどういったことをどのような流れで書くか、骨組みとしての見出しを作成することから申請書の作成を始めることをお勧めします。
次に、その見出しの流れが、自分がもし口頭で今回の申請書を説明する場合を想定し、違和感がないかを確認してください。このことで、文書・論理の流れの一貫性が担保されるはずです。
● コツ2:結論先出しを意識した文書作成
骨組みができた次は、いよいよ文書への肉付けです。ここで、意識してもらいたいことは、読み手に理解を促す文書構成を心掛けることです。普段、我々が読む様々な文書は起承転結で書かれていることが多いが、これは簡潔に内容を理解させるためには、素人には不向きな文章構成です。
コツ1で作成した骨組みにそって、結論のみを記載するもしくはいくつかの結論を箇条書きにした構成を行ってみてください。各見出しで伝えたいことが明確化するはずです。もし、記述が不足する場合は、各記述の後に、「なぜなら~」、「具体的には~」など説明を追加していくことで、各項目間の整合性を保ちつつ、内容の補強を行うことができます。
ここまでご紹介したコツはあくまで申請文書作成のための要点・コツであり、具体的かつ実現可能な経営計画や投資計画があってこそ役立つものであることは言うまでもない。しかし、素晴らしい計画があっても、読み手(審査員)に伝わらなければ、それらが採択に繋がる可能性は期待できない。これらのコツが、皆様の一助となり、補助金採択に繋がれば、これ以上の喜びはない。
コンサルティング・ビジネス研究会 執筆チーム(中小企業診断士)