『補助金』と『助成金』の違いってわかりますか?
補助金という名前も聞く一方、新聞とかでは「国からの助成金が…」といった、ちょっと違う名前のものも聞きますよね。これらは一見、どちらも同じものに見受けられがちですが、実際のところ全くと言っていいほど違います。どこが違うのかを確認していきましょう。
目次 |
1.補助金と助成金の違いを理解しよう
2.意外と知られていない、補助金と助成金の留意点あれこれ 3.色々あるけど、メジャーな補助金・助成金はこれ! 4.まとめ |
これらは同じ国から出るお金であっても財源元の省庁が違います。『補助金』は経済産業省が、『助成金』は厚生労働省が管轄となります。
どこかで「助成金の申請手続きができるのは社会保険労務士のみ」と聞いたことがあるかもしれませんが、管轄元が厚生労働省と聞けば納得いきますよね。
代表的なものでは、以下のような違いがあります。
1.財源
『補助金』は税金が充てられている一方、『助成金』については雇用・労務案件の状況改善および向上が目的となっているため、雇用保険料があてられています。
前者は「事業の発展の視点から経済発展につなげる」、後者は「勤務意欲を向上するという視点から経済発展につなげる」ためのもの、とイメージするとわかりやすいですよね。
2.決定までの審査
『助成金』は、基準を満たし、かつ必要な書類が全て適切に記載された上で書かれていれば『全員が』取得できます。一方『補助金』は、そのテーマに即した事業計画を書き、必要な書類を集めるというのが最低ラインとなります。そこから3割~4割のふるいがかけられ、やっと取得の権利を得ることができます。
つまり、助成金は審査がなく(書類が揃っているか?といったものはあり)、補助金は厳しい審査が待っている、ということになります。
3.交付金額
ここは、審査の厳しさがそのまま出ます。
補助金については、補助金額は多いものでは1,000万円単位のものもあります。一方、基準さえクリアできればという助成金については10万円単位のものが多くあります。
4.補助率
助成金については、施策に対しての全額が交付される一方で、補助金についてはその名前の通りで全額が出るわけではなく、半分~2/3(金額上限あり)が交付されます。
さて、ここまで見ると、いいことずくめな補助金&助成金ですが、留意しなければいけないこともいくつかありますので気をつけましょう。
1.どちらも後払い
助成金の申請、補助金の申請&審査通過の連絡があり、「お金が入る!」と思って楽観視してはいけません。「ちゃんと事業に使われたか?」の確認が入るため、どちらも後払いとなります。
中には、審査通過から1年程経ってから入金がなされる補助金もあります。自己資金で賄おうとすると資金ショートが起きるかもしれない!というリスクがある方については、事前に金融機関への相談が必須となります。
2.書類集めが大変
大事な予算を使った施策であるため、国も何に使われるかの確認を十分にしなくてはならないため、申請には様々な書類が必要となります。
「申請書にきちんと事業計画を書きさえすればなんとかなるでしょ!?」と思っていたら大間違いで、どれだけいいものを書いていたとしても、指定された書類が全部揃っていない、もしくは計画以外の書類がいい加減だと、読んでさえ貰えないかもしれません。
書類集めについては、社会保険労務士や中小企業診断士といった専門家が近くにいれば相談してみることが大事になります。
3.募集期間
補助金は同じようなものが毎年度やっているように見えますが、実は通年でやっている訳ではなく、予算(ないし補正予算)に合わせて募集要項などを変えています。また、実際に募集開始になってから締切までの期間は1ヶ月というものもあり、意外に短いのが実情です。
助成金に関しても、基本は通年でやっているものの、どこかのタイミングでマイナーチェンジをしたり、やはり今年度からなくなったり(もしくは形が変わったり)というものも存在します。
募集開始になってから慌てないためにも、普段からアンテナを張り巡らせておき、いつでも対応できるような事業計画などの雛形を用意しておくことが大事です。
補助金・助成金と一言であらわしても、その種類は様々です。ここでは、その代表的なものを紹介します。
【助成金】
■人材開発支援助成金(キャリア形成支援制度)
厚生労働省が実施している人材開発支援助成金(制度導入助成)で、継続して人材育成に取り組むために、人材育成制度等を新たに導入し、その制度に基づいて実施した場合に、教育一定額を助成する制度です。助成額は1制度あたり47.5万円(ある要件を満たすのであれば60万円)となります。
【補助金】
■ものづくり補助金
中小企業・小規模事業者が行う革新的なサービス開発、生産プロセスの改善などに使える補助金です。機械装置・技術導入・外注加工・委託費などに利用でき、補助率は2分の1(3分の2の場合あり)、補助上限額は1,000万円となります。
■小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の発展のため、商工会議所などの支援を受けて経営計画を作成し、計画に沿っての運営に取組むための販路開拓等の経費の一部を補助するものです。補助率は3分の2、補助上限額は50万円(一定の条件を満たせば、100万円ないし500万円)となります。
■IT導入補助金
中小企業、小規模事業者がITツールを導入する経費の一部を補助することで生産性の向上を図ることを目的とした補助金です。補助率は2分の1、補助上限額は15~50万円となります。
いかがでしたでしょうか。聞いたことがあるだけだと一見混同しそうな2つの制度ですが、これだけの違いや留意点があります。「是非ともチャレンジしてみたい!」と思った方については、先に挙げた専門家への相談もひとつの手段とし、獲得に向けて門を叩いてみて下さい。
森 大輔(中小企業診断士)
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