中小情報サービス企業が補助金・助成金で経営に弾みをつける方法

全体では21兆円市場で好調に見える情報サービス産業には、旧態依然とする下請分業構造の下、人手不足や資金不足などの様々な理由から足踏みしている中小企業も見受けられます。これらの中小企業が助成金や補助金を活用して経営を活性化する方法をご紹介します。

中小情報サービス企業が補助金・助成金で経営に弾みをつける方法

目次
1.中小情報サービス企業を取り巻く環境と課題

2.中小情報サービス企業と助成金

3.中小情報サービス企業と補助金

4.まとめ

1.中小情報サービス企業を取り巻く環境と課題

【情報サービス産業には様々な業態の事業者が存在する】

いわゆる情報サービス産業には、およそ21兆円の市場規模の中で101万人ほどの従業員が働いていると報告されています。(経済産業省「特定サービス産業実態調査」「工業統計調査」2014)
そのうち、売上高で見ておよそ50%が他社より受注を受けるなどしてソフトウェア開発に関わっている会社であり、およそ10%がソフトウェアプロダクトを開発・販売している会社、およそ40%が情報処理や運営委託などになっているようです。ここで働く従業員の約6割がシステムエンジニアおよびプログラマでソフトウェアを開発する技術者ということになります。
 開発環境・ビジネス環境自体はインターネット普及以降大きく変化しており、情報サービス産業内でも技術だけでなくビジネスセンスを持って事業に変化をもたらす人材が求められています。さらには、企業自体も生き残りのためには、技術基盤のシフトやビジネスモデルの構造変革が必要です。

 

【時代の変化がもたらす光と影】
 WebサービスやIoT、AI、ロボットなどの成長分野で技術とビジネスをうまく結びつけて展開している企業は、時代の波に乗って勢いを見せており、情報サービス産業の中でも光輝いた存在です。一方、SEサービス(直接ユーザー企業やシステムインテグレータ等から依頼を受けSEを派遣・準委任などの契約で提供する事業)を中心にビジネス展開している企業は、近年の外国人技術者の流入や安価なソフトウェアパッケージ製品の普及などを受け、取引単価の相場下落などの影響で、大きな成長が難しい状況になっています。また、限定したプラットホームでのみビジネス展開してきたために、その開発基盤が陳腐化し、今後の先行きに不安を抱えているシステム開発会社も存在しています。さまざまな理由により、変革が進んでいない企業も多数存在しているということになります。

 

【補助金・助成金の獲得をきっかけに】
難しい状況を打破するためには、トレンドの分野に技術スキルをシフトして受託開発の比率を高めたり、新しいソフトウェアプロダクトを開発するなどの、高付加価値事業への転換を図る必要があります。その際の、一番の問題は人材不足(量的・質的)と資金不足なのではないでしょうか。
 本稿では、先行き不安な状況にある中小情報サービス会社が、経営に弾みをつけるに当たり、補助金・助成金を活用する方法についてご紹介したいと思います。

2.中小情報サービス企業と助成金

より付加価値の高いビジネスへシフトしていくために最も重要な課題として、人材開発があげられるでしょう。すなわち、在籍している従業員の技術力を向上させることに加えて、優秀な従業員を確保することが重要になります。そのための資金確保の一方法として、厚生労働省管轄の各種助成金を活用する方法があります。

助成金の受給は、次の4つの前提条件を満たしていれば可能です。

1)雇用保険に加入している事業者であること、
2)会社都合による解雇者を出していないこと、
3)1名以上正規従業員を雇用していること、
4)残業代未払などの労務違反をしていないこと、

がその条件です

 

中小IT事業者が、人材開発に助成金を活用する場合、活用しやすい助成金には以下の二つが挙げられます。
一つは、非正規雇用労働者の就業安定化施策により、正規雇用従業員との一体感醸成や意欲向上を図り、安定雇用に繋げる方法です。

具体的には、「キャリアアップ助成金」の「正社員化コース」、「賃金規定等共通化コース」「諸手当制度共通化コース」「健康診断コース」などがあります。

正社員化コース 有期雇用従業員を正規従業員に転換することで1人当たり57万円支給を受けることができます。
賃金規定等共通化コース 正社員と共通の賃金テーブルの導入・適用で1事業所当たり57万円支給される制度です。
諸手当制度共通化コース 正社員と共通の諸手当制度の導入・適用で1事業所当たり38万円支給される制度です。
健康診断コース 法定外健康診断制度を新たに導入し、4名以上実施した際に1事業所当たり38万円支給されるものです。

*「キャリアアップ助成金」には、この他に4つのコースがありますが、ここでは省略します。

そのほか、「人材開発支援助成金」の制度導入による助成金が挙げられます。

これには、「セルフキャリアドック制度」、「教育訓練休暇制度」、「技能検定合格報奨金制度」などがあります。

セルフキャリアドック制度 従業員自身でキャリアプランを立てるために、キャリアコンサルタントのカウンセリングを事業主負担により受けさせる制度です。
教育訓練休暇制度 従業員の専門技術知識習得を支援するもの
技能検定合格報奨金制度 従業員の技能向上への意欲を高めるもの

これらの制度導入および実施をすると、それぞれの制度につきの47.5万円の助成金支給が得られます。
 
二つ目は、所属する技術者をスキル転換することにより、チャレンジしようとする分野に挑む体制を整える方法です。これは、ビジネスプランに沿ったスキルマップをターゲットとして、教育体系および要員育成計画を立案し、計画的に教育訓練を実施する費用の一部を助成金の獲得で補おうとするものです。これは「人材開発支援助成金」本来の事業に当たり、

一般訓練コースではOff-JTに対し、経費助成30%、賃金助成(訓練時間に応じた受講者の1時間当たりの補填額)380円が支給されるものですが、中小IT事業者であれば、特例訓練コースとして認められ、Off-JTが経費助成45%、賃金助成760円、OJTが実施助成665円(訓練時間に応じた訓練指導員の1時間当たりの補填額)となる可能性が高いと思われます。

助成金獲得は難しそうに見えますが、実は条件が揃っていて、正確に書類を作成・提出しさえすれば、必ず受給されるものです。これは、仮に利益率10%の会社が年間で総額300万円の助成金支給を受けた場合、3,000万円の売上獲得に相当する計算になります。是非申請を検討していただきたいと思います。

3.中小情報サービス企業と補助金

生産性を向上し、収益構造を改善するには、高付加価値ビジネスに転換する必要があります。そのチャレンジには、必ず資金が必要になるでしょう。

その際に、「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」の認定を受けられれば、機械装置費・技術導入費・専門家経費・クラウド利用費などの経費に資金補助を受けることができます。

また、「中小企業等経営強化法」に基づき「経営力向上計画」あるいは「経営革新計画」またはその両方を作成し計画認定を受ければ、さまざまなメリットが享受できます。「経営力向上計画」認定で、固定資産税の減免措置や各種金融支援が受けられます。「経営革新計画」が認定されれば(計画内容に条件はありますが)「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」の補助率上昇を受けることができたり、信用保証協会の優遇措置、政府系金融機関による低利融資などが受けられたりします。

資金の目途が立って、新しいプロダクトを開発できたとしても、販路を開拓するのはまた別次元の問題です。この販路開拓の問題解決に係る選択肢として、「サービス等生産性向上IT導入補助事業」があります。これは、本来、主にサービス業に従事する中小企業、小規模事業者(飲食、宿泊、小売・卸、運輸、医療、介護、保育等)が生産性向上を目的としてITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する際に経済産業省が資金補助するという制度です。

しかし、どのITツールでも適用されるわけではなく、経済産業省がIT導入支援事業者と認めた事業者に相談して、この事業に相応しいものとして登録されたITツールを導入する必要があります。そこで、新しく開発したプロダクトを同事業のITツールとしての登録を目指すという方法が考えられるわけです。このITツールの登録により、事業者の信用力も増し、公共の運営するサイト(事務局ホームページ)から引き合い獲得の可能性が高まることでしょう。

まとめ

以上、中小情報サービス企業(特にSEサービス事業を中心とする会社や開発基盤が陳腐化しているシステム開発会社)が、助成金や補助金を活用して、経営に弾みをつけるいくつかの方法を記してきました。

これらの補助金や助成金を獲得するためには、しっかりとした人材育成計画や経営計画を立案する必要があります。また、本稿で詳細までは記述してありませんが、認定時や支給時の種々の条件により助成金や補助金の支給金額が増減することもあります。

経営に活かす計画を作成したいとき、補助金・助成金の詳細を知りたいときは、ぜひ、われわれ中小企業診断士まで、お気軽にご相談ください。

執筆者

竹口 隆美(中小企業診断士)

 

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