ライバル企業に差をつける!売上アップに繋がる製造業の設備投資とは

「今使っている機械は老朽化しているから買い換えたい」、「忙しいから同じ機械をもう1台欲しい」など、設備投資の動機はいろいろありますね。ところで、機械を購入した後には具体的にいくら儲かるようになるか想定していますか。今回は設備投資を企業の売上アップに繋げるためのポイントをご紹介します。

ライバル企業に差をつける!売上アップに繋がる製造業の設備投資とは

目次
1.業績の良い会社ほど設備投資をおこなっている! -中小製造業の設備投資動向-

2.選ぶ機械で会社の未来が変わる!

3.設備投資プラスαで我が社の“3本の矢”

4.まとめ

1.業績の良い会社ほど設備投資をおこなっている -中小製造業の設備投資動向-

 まず、製造業の近年の動向について見てみましょう。経済産業省・厚生労働省・文部科学省が発表した2017年度版「ものづくり白書」によると、製造業の営業利益は2016年初めから半ばにかけて円高の影響で企業業績が悪化したものの、おおむねは回復傾向にあります。

中小製造業の設備投資状況
図表1:企業業績の推移(製造業業種別・営業利益)
出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省編「ものづくり白書(2017年版)」

 

 また、東京商工会議所が平成27年におこなった「東京23区内中小企業の生産性向上を図るための設備投資に関するアンケート」によると、「過去2年間の国内設備投資の状況」は、好業績の会社の61.1%が設備投資をおこなっていたことがわかりました。

東京都中小企業の設備投資状況
図表2:過去2年間の国内設備投資の状況
出典:東京商工会議所「東京23区内中小企業の生産性向上を図るための設備投資に関するアンケート」

 

 さらに、「今後3年間における設備投資予定の有無」について、「投資を予定している」のは好業績の会社は59.7%、「それ以外」は38.1%と好業績の会社ほど設備投資をおこなう予定であることがわかります。

東京都中小企業の設備投資予定
図表3:今後3年間における設備投資予定の有無
出典:東京商工会議所「東京23区内中小企業の生産性向上を図るための設備投資に関するアンケート」

 

 これらのデータから、企業業績の改善が進むと、設備投資の拡大に取組む意欲的な中小企業が多く存在することがわかります。

2.選ぶ機械で会社の未来が変わる!

 我が社もそろそろ設備投資をしよう!と考えている経営者のみなさまは、購入する機械をどのような理由で選んでいますか。

「今の機械じゃ生産が間に合わないので同じ機械をもう1台欲しい」
「同業他社はみんなこの機能の機械を入れているから」

といった理由で購入する機械を検討しているとしたら、もう少し見直しが必要かもしれません。「補助金で購入費用が安く済むからとりあえず導入する」という動機も要注意です。機械を新しくしてもあまり使わずに放置して、ただスペースを無駄に使って導線も悪くなって・・・などと悪循環にならないためにも、その機械を入れる理由について会社全体を見回して多面的に考えてみましょう。

以下に5つの質問を設けましたので我が社の状況をノートに書き出してみましょう。

接尾投資 自己チェック

 

<機械を新しく購入する際に考えておきたい5つのポイント>

1.購入する機械は何ができるか

  • 導入する機械の性能をしっかりと把握しましょう。メーカーの勧めるままに購入を検討していないでしょうか。
  • その機械を導入することによりどんな嬉しいことが起こりますか。付加価値の高い商品を製造するでしょうか。生産性はどのくらい向上するでしょうか。今までの機械では毎分10個しか生産できなかったところが100個になる。といった具体的な数値で表せると投資判断もしやすくなります。
  • 機械を入れなくても改善できる方法がないでしょうか。現場の作業工程の見直し等で改善できるならば、まずはその改善方法を検討するべきです。

 

2.機械導入による具体的な売上見込みを計算できるか
 機械を導入すると、受注量が何個増えるか、顧客を何社増やせるか、今まで失注していた◯万円を売上として見込める等、売上の試算をしてみましょう。売上計画が立てられれば、何年で設備投資金額の回収ができるかの目処が立ちます。

 

3.機械導入に必要なトータル費用を把握しているか
 機械を設置するための運搬費、オプション品などの費用はもちろんのこと、従業員が機械のオペーレーションを習得するための費用、機械を導入するにあたってレイアウト変更にかかる費用や床を補強するための費用等、派生する費用についても予算に入れておきましょう。融資を検討する場合は特に考慮が必要です。

 

4.設備投資以外の経営上の問題点は何か
 現在の我が社の問題点を一度洗い出してみましょう。製造業の要であるQCD(品質・コスト・納期)で何か問題は起こっているでしょうか。その原因は何が考えられるでしょうか。機械を導入することで派生する問題はないでしょうか。企業全体を総合的に判断して機械導入を検討しましょう。

 

5.その機械購入には夢がありますか
 現在の生産体制を維持するために機械を更改することもとても大事な理由ですが、是非、従業員一丸となって夢が見られるような設備投資を考えてみましょう。例えば、普段から「このような商品が欲しい」という引き合いや従業員からのアイデアなどがあれば、それを実現できる機械を導入することで、新しい取引に繋げることもできます。また、作業自動化が可能な機械の導入であれば、空いた時間を新商品開発や販路開拓の時間に割り当てることもでき、付加価値向上や働き方改革につながります。設備投資をきっかけにして我が社の成長戦略を描いてみましょう。

3.設備投資プラスαで我が社の“3本の矢”

 5つのポイントをノートに書き出したら我が社の現状と将来の方向性が見えてきたのではないでしょうか。検討していた機械が妥当なものかどうか改めて確認できたと思います。ノートに書き出した内容は、今後の会社経営にとって大事なことが書かれています。また、設備投資で融資をお願いする場合には、どうしてその機械を購入する必要があるのか、金融機関へ設備投資を含めた事業計画の説明が必要になってきます。その説明資料として

経営力向上計画」を作成することをお勧めします。

「経営力向上計画」とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や付加価値向上、設備投資など、自社の経営力を向上させるために作成する計画で、国が認定します。

<経営力向上計画に取り組むメリット>

  1. 認定された事業者には税制・融資などの面でいくつかの優遇措置がある
  2. 補助金を活用して設備投資をおこなう際には審査の加点要素となる場合がある
  3. 金融機関へ融資をお願いする際に融資内容を説明しやすい
  4. 経営幹部や従業員と目標を共有できる

 記載する内容は、会社の事業概要や経営状況、市場環境分析、経営力向上のための取り組み内容、取り組みのために必要な設備投資や資金調達方法等です。さきほどノートに書き出した内容を利用して書くことができます。申請書の中に「経営力向上の内容」があります。これは、今後売上をアップさせるためにどのような取り組みをするか15項目の中から最低3項目以上を選択して、実施内容を記載します。この3項目を重点項目として実行に移すことにより、売上アップを図っていきましょう。
ここでプラスチック加工業の「経営力向上の内容」の例を「A社“3本の矢”」としてご紹介します。A社の場合、若手のやる気のある技術者がいること、技術力の高さという自社の強みを生かした取り組み内容としました。もちろん、設備投資も大事な柱の一つとして設定します。

経営力向上計画と設備投資との相乗効果

まとめ

いかがでしたでしょうか。設備投資が現状維持や他社との横並びの為ではなく、生産性向上や新商品開発など我が社の成長に貢献するものとなるよう、問題点の洗い出しをして事業計画に落とし込む方法をご紹介してまいりました。早速今からノートを広げて会社の未来を描いてみてください。

執筆者

橘 真美子(中小企業診断士)

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