設備投資は、企業の成長、経営基盤の確立を図る上で、必要不可欠です。生産性の向上、合理化によるコスト競争力の向上や、新製品、新サービス開発による将来の収益力強化のために、設備投資が必要となります。しかし、新規投資には大きな資金が必要なため、投資対象の決定、投資効果の見極めなどの設備投資計画が非常に重要です。本章では、設備投資計画作成のポイント、流れについて説明します。
目次 |
1.設備投資対象の決定
2.設備投資に対する資金計画の作成 3.設備投資への補助金・助成金の活用 4.まとめ |
■投資目的の明確化
投資対象を決定するために、まず投資目的を明確にします。
方法としては、経営ビジョンや、現在の経営環境から、企業の将来進むべき方向性を想像します。それを実現させるための課題を考え、課題解決につながる投資案件をいくつかピックアップしましょう。
新規設備投資の目的の多くが、売上向上や、費用削減になると思いますが、具体的に売上を〇〇万円向上させるや、費用を△△万円削減させるなど、目的を明確にすることが重要です。より具体的に想像することで、どの投資案が、実現性が高く、優先順位が高いかを判断しやすくなります。
また、投資案件は複数ピックアップしましょう。ひとつの案件を熟考するより、複数の案件を比較し、選択する方が、より合理的な判断につながります。
■投資対象の決定
ピックアップした投資案から、投資対象を決定する際は、その投資に対して、十分なリターンを得られるかを判断材料にします。まずは、売上増加効果、費用削減効果を見積もり、投資のために調達する資金を何年で回収できるかを算出しましょう。
売上増加効果については、設備投資による顧客対応力強化、商品、サービスの優位性向上などの内部環境分析や、市場動向などの外部環境分析から、金額を見積もります。費用削減効果については、設備投資によるリードタイムの削減や、作業工数の削減効果から、金額を算出します。特に、売上増加効果の見積もりは難しいですが、重要な指標となりますので、客観的な視点を意識して分析することが重要です。
それらの分析から、どの案件が、投資対効果が高いかを検証し、投資対象を決定しましょう。
次に、決定した投資案件に関して、具体的な資金計画の作成を行います。
設備投資は、多額の投資となるため、十分な資金が必要です。自己資金および金融機関からの借入金をどのように利用して、投資を行うかの判断が重要となります。そのためにも現実的な設備投資計画が重要です。
自己資金を使う場合は、手元資金の減少が伴うため、日頃の運転資金が不足しないか注意する必要があります。また、金融機関から借入れをする場合は、手元資金の減少はありませんが、設備投資から回収した資金で、返済を行う必要があるため、設備投資に失敗した際には、負債だけが残ることとなります。その為、金利水準、返済期間、担保の必要性などを十分に考慮し、借入を行う金融機関を選定しましょう。
特に大きな設備投資は、今後の企業経営を大きく左右することにも繋がりますので、資金計画は綿密に行いましょう。資金計画を作成した上で、無理が生じたときは、場合によっては、前項の投資対象の決定プロセスに戻ることも重要です。
経済活性化の一環として、国や地方自治体が設備投資のための補助金を要しているケースも増えています。
例えば、中小企業庁が実施している「ものづくり補助金」では、例えば、補助上限1,000万円、補助率1/2などの補助金を利用できます(「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」に係る事務局の公募要領 平成30年1月発行より)。このような補助金を利用することで、設備投資負担を軽減することができ、設備投資計画を立てやすくなります。募集要件や、募集時期などの制限や、審査などがあるため、会社の設備投資計画と合うかの考慮が必要ですが、利用できる制度がないか、検討してみましょう。
ここで、近年実施された設備投資に関わる、いくつか補助金・助成金制度名を列挙します。
①補助対象事業及びものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金 (中小企業庁)
②革新的事業展開設備投資支援事業 (東京都中小企業振興公社)
③受注型中小企業競争力強化支援事業助成金 (東京都中小企業団体中央会)
※制度内容は毎年変更があるため、制度実施の有無、支援内容については、最新のHPをご確認ください。
設備投資は、会社を長期的に継続する上で、避けては通れない重要なアクションです。十分な設備投資計画をたて、実行していきましょう。
また、実際に設備投資をしても、うまく活用しなければ、会社の成長に繋がりません。それどころか、資金不足に陥る可能性もあります。設備投資を行い、満足するだけでなく、計画を確実に実行していきましょう。そのためにも、投資目的を明確にし、PDCAを回しながら、全社一丸となって、目的達成へと進めていくことが大切です。
最適な設備投資を行い、立ち上げ計画を確実に実行することで、会社を継続的に成長させていきましょう。
藤吉 健太郎(中小企業診断士)