近年街を歩いていてもどこからともなくタイ語が聞こえてくる機会が増え、タイからの観光客の増加を感じることが多くなりました。タイでは日本食が人気であり、中小食品メーカーにとっても現地での販売をスタートアップする機会が増えていると期待できます。
目次 |
1.タイ市場における事業機会
2.タイに進出する事業計画策定に当たっての留意点 3.施策の活用 4.まとめ |
タイ市場に進出する機会として以下の要因が考えられます。
1. 一人当たりGDPの成長
最近のタイの一人当たりGDPは以下の様に成長しています。我が国はタイを特恵国から除外し、一定の経済水準の国として捉えています。
2015年 5,831ドル
2016年 5,970ドル
2017年 6,591ドル
2. 日本食に対する人気
ジェトロが2014年3月に行った「日本食品に対する海外消費者アンケート調査-バンコク編-」によると、「一番好きな外国料理は何か」という質問に対して66%が日本食と回答しており、中華料理やイタリア料理を上回っており、タイにおける日本食の人気がうかがえます。健康志向や、日本食レストランが現地に多く進出していることも、日本食の人気を底上げしている要因と考えられます。
3. 日本を訪れるタイ人環境客の傾向
最近のタイからの観光客は定番の観光地だけでなく、地域の風情や飲食を楽しむ人々が増えているようです。このような傾向は、地域の特徴的な製品を製造している中小食品メーカーにとって、現地で受け入れられやすい環境に繋がってくるものと期待できます。
タイに進出するに当たっては綿密な事業計画を策定することが必要ですが、以下留意点を挙げます。
1. 標的顧客について
購買力が上がってきているといっても、地域性の強い日本食を購買する顧客層は一定の所得を持つ層と想定されます。現地に進出している企業は多くありますので、できれば先行する異業種の企業に現地消費者や市場の特徴をヒアリングすることや、ある程度のマーケティングリサーチも必要となります。標的顧客への販路については、日経の商社など「土地勘」を備えた企業と販売契約を締結し、市場の反応を確認しつつ販売開拓することでリスクを低減することが考えられます。
2. 自社の強みについて
進出の際には、実際に現地を視察・調査し、現地生産の製品や日本から輸出されている製品と比べ、強みとして勝負できる自社製品の特徴が訴求できるかを分析します。また、模倣品が生まれやすい市場でもあるので、自社の強みを維持する上で、自社の商標に加え類似する商標も登録しておく方が好ましいといえます。
3. 競合他社について
類似の製品を生産する現地メーカーが出てくることが考えられますが、これに対しては、前述の商標登録に加え、独自の加工方法を確立することや、現地で調達しにくい日本の原材料を使用することなど、製品面での模倣困難性を高めておくことが必要です。
輸出に当たっては以下のような支援施策を活用することが考えられます。
1. ジェトロ相談窓口の活用
ジェトロでは、展示会出展や輸出に初めて着手する企業への支援を行っていますので、初期段階から相談窓口に問い合わせができます。
2. Japanブランド育成支援事業の活用
経済産業省では海外への販路開拓を支援するため、戦略策定段階、ブランド確立段階、開発・ブランディングなどのプロデュースに対し、補助金を支援する施策も行っています。(出典:中小企業施策利用ガイドブック)
3. 現地投資委員会(BOI=Board of Investment)の恩典活用
食品の加工技術や経済な貢献が認められる投資案件については、税金や減価償却などの現地の恩典も利用することができます。日本にもタイBOI事務所があるので、相談することができます。
タイをはじめとする東南アジアの市場は成長市場であり、購買力も相当に上がってきていることは、中小食品メーカーにとっても事業拡大の機会といえます。しかし進出に当たっては自社の強みやリスクを考えた事業計画を策定するとともに、我が国や現地の支援施策を活用することで、企業の資金力や情報力を補完することを検討しましょう。
森山潤三(中小企業診断士)