事業計画には目的に応じてさまざまなものがあり、企業の経営状態、提供される補助金、支援策に応じて事業計画策定を使い分ける必要があります。それぞれの特徴や支援策の概略を説明します。
目次 |
1.金融支援を目的とする場合
2.経営管理を目的とする場合 3.優遇制度利用を目的とする場合 4.まとめ |
借入金の返済負担等、財務上の問題を抱えていて、金融支援が必要な中小企業・小規模事業者が認定支援機関(経営革新等支援機関)のサポートを受けて作成する事業計画が「経営改善計画」です。
支援を受けたい中小企業・小規模事業者が認定支援機関(および金融機関)とともに「経営改善支援センター」に申請・受理されることで、計画策定費用及びフォローアップ費用の総額の3分の2(上限200万円)の補助を受けることができます。
計画は、
①3年以内に経常利益黒字化、②5年以内に中小企業特性を考慮した債務超過の解消、③計画完了(開始後5年)時点での債務返済年数10年を目標
とするものです。
また、事業者の債務者区分により、
「要管理先」に区分される場合策定される計画を「実現性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)、「破綻懸念先」に区分される場合策定される計画を「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画(合実計画)」
と呼びます。
一方、このような重篤な事態になる前に策定する事業計画が「早期経営改善計画」です。金融支援が必要となる段階に至る前に、認定支援機関に資金計画やビジネルモデル俯瞰を通じた経営改善の計画策定の支援を受けることができます。
経営改善支援センターより、計画策定及びモニタリング費用の総額の3分の2(上限20万円)の補助を受けることができます。
現時点で借入金に関して返済条件変更の必要がないものの、
①ここのところ資金繰りが不安定だ
②良くわからないが売上が減少している
③自社の状況を客観的に把握したい
④専門家のアドバイスが欲しい
といった場合には、専門の認定支援機関に相談をください。(中小企業庁パンフレットより)
事業所管する経済産業大臣が事業分野ごとに示した指針に基づき、中小企業・小規模事業者が自社の生産性向上のための人材育成・財務管理・設備投資などの取り組みを示すために作成する事業計画が「経営力向上計画」です。こちらも経営革新等認定支援機関により申請のサポートを受け提出するものです。支援措置としては、
①生産性を高めるための機械装置を取得した場合、3年間、固定資産税を1/2に軽減
②計画に基づく事業に必要な資金繰りの支援
などを受けることができます。
経営力向上計画の策定実績は、様々な補助金の審査において「加点要素」になっており、国が中小企業・小規模事業者に対して積極的な策定を後押しする事業計画です。
また、中小企業・小規模事業者が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的として策定する中期的な計画が「経営革新計画」です。承認企業に対して、
①政府系金融機関からの低利融資
②中小企業信用保険法の特例
③中小企業投資育成ファンドの特例
などを受けることができます。
このように様々な経営計画がありますが、人間の健康活動に例えると、
①健康状態の1ランク向上を図るため=経営力強化計画
②新しい健康活動へ取り組む=経営革新計画
③ちょっと風邪をこじらせた=早期改善計画
④肺炎で入院=経営改善計画
というイメージに分類できます。共通する点として認定支援機関のサポートがあります。
とはいえ、全国に2万以上ある認定支援機関の全てがこの方面に有効に機能しているわけではありません。取引先銀行に相談し、実績のある支援機関の紹介を受けると良いでしょう。
株式会社PQM総合研究所 代表取締役 宗像 令夫(中小企業診断士)
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