経済活性化に向けた国の中小企業の支援施策として、さまざまな補助金や助成金が存在しています。自社の発展のために補助金を活用しようとされている経営者の方も多いと思います。
その中の代表的な施策として「ものづくり補助金」と言われる「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」が挙げられます。
これら補助金の活用を検討する際には、「ものづくり補助金の事例が知りたい」「申請してどのくらいが採択されるの」といった疑問を持っている方も多いと思います。やみくもにやりたい事だけを申請しても採択されるとか限りません。ものづくり補助金に採択される案件には理由があります。
今回は、平成28年度の採択事例からみた選ばれる補助事業者の理由をご紹介していきます。
目次 |
1.採択されるのは約4割?! 年度別ものづくり補助金採択事例
2.こんなに違う!モノづくり補助金エリア別の採択事例 3.事例からみえてくる!ものづくり補助金の採択傾向とは! 4.まとめ |
企業の継続的な成長に向けて、必要な資金を国の補助金でまかなうことは合理的な選択肢のひとつとして考えられます。その補助金を利用したい企業の事例として、平成28年度補正「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」では、全国で15,547件の応募がありました。応募された申請書は、外部の審査機関において採択・不採択が審査されるのですが、6,157件が採択されており、39.6%の採択率となっています。
平成26年から28年の年度別でこれまでの採択事例を見ると、
応募数 | 採択数 | 採択率 | |
平成26年度補正予算1次公募 | 17,128 | 7,253 | 42% |
平成26年度補正予算2次公募 | 13,350 | 5,881 | 44% |
平成27年度補正予算1次公募 | 24,011 | 7,729 | 32% |
平成27年度補正予算2次公募 | 2,618 | 219 | 8% |
平成28年度補正予算1次公募 | 15,547 | 6,157 | 40% |
採択率をみると、平成26年度は4割強でしたが、平成27年度1次では3割、2次では1割にも満たずと厳しい状況となっていました。1割にも満たない状況では、この時に申請した企業にはつらい状況だったのではないでしょうか。応募するタイミングによっても差はありますが、ものづくりの補助金はよくても4割前後の採択率と考えておきましょう。申請をすると期待感がとても高まり、審査結果を心待ちにしますが、不採択となった時のショックは大きいので、採択される可能性を高めていく必要があります。
ものづくり補助金は、各都道府県ごとに申請され、それぞれで審査をおこなっているため、申請者がすべて同じテーブルで比較・審査されている訳ではありません。もちろん都道府県によっては業種の片寄りも見られることから、地域によって申請件数や内容、特色も異なります。
こちらは地域別の採択件数ランキングになりますが、
上位ランキングとしては、
①東京都595
②大阪府564
③愛知県395
④静岡県284
⑤埼玉県264
下位ランキングは以下となります。
①鳥取県12
②島根県27
③高知県34
④佐賀県36
④山梨県36
順当な結果で企業数や人口等に比例しているように見受けられます。一方都道府県の中小企業数に対しての採択率について比較すると、
上位ランキングとしては、
①大阪府 1.7%
②静岡県 1.4%
③愛知県 0.8%
④長野県 0.6%
⑤富山県 0.5%
下位ランキングは、
①東京都 -1.9%
②兵庫県 -1.2%
③千葉県 -1.1%
④北海道 -1.0%
⑤神奈川県 -1.0%
採択件数が最も多かった東京は、競争率も最も高いことになります。ただし採択件数2位の大阪は、都道府県別採択率も高いことから比較的選ばれやすい場所となります。
ものづくり補助金は、「ものづくり技術」と「革新的サービス」に申請が分かれており、それぞれ採択事例で特長的なものを紹介していきます。
<「ものづくり技術」の採択事例>
製造業としての生産性向上に関する採択事例が多く、新設備の導入によって保有している設備の性能向上をおこなっています。
- 「最新鋭ワイヤー放電加工機導入による 技術力高度化・生産性向上」計画
- 高性能旋盤導入による生産性向上と新分野拡大
- 丸パイプ継手加工時間1/8、加工コスト1/10、生産量2倍を実現するロータリープレス機の導入
また市場の占有率を高めていくために、自社の得意とする業界に特化して、技術開発していくケースも多く見られます。
- 鉄道関連精密板金部品の高精度フレキシブルべディングシステム
- 養殖場のための水流発生・蓄電ハイブリッドシステムの開発
- 医療用途拡大に伴うギヤポンプ部品の高精度化及び増産体制の構築
<「革新的サービス」の採択事例>
今後の少子高齢化社会を見据えて、高齢者に関する革新的サービスの採択事例ではヘルスケア領域中心に多くみられました。
- 光るバランスボールを用いたシニア層向け運動教室の展開
- 最先端立体視技術を使った認知症対策脳トレーニングプログラム開発
- 自宅での服薬をサポート!ロボットによる服薬支援サービスの創出
また一方でこどもの教育をテクノロジーを活用したサービスも見受けられます。
- 学校教室の学生机をIoT化することによる講義支援システムの革新
- 「ご自宅子ども向けプログミング教室」の展開
- 子育て支援新制度に対応した革新的登降園システムの開発計画
新たにシステム開発によって、自社の新しいサービスを提供する採択事例も多く見られます。
- AIによる業種特化型多言語自動応答システムの開発
- 顧客・店舗の双方にとって便利・快適なセルフ注文システムの構築
- IoTデバイスとの連携による低カロリー健康食提案システムの革新
今回は、「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」の採択傾向について平成28年度の事例を踏まえて紹介いたしました。これから補助金の申請を検討されている方は、さまざまなケースが想定されると思いますが、地域での特徴や採択されやすい申請方法など時期によっても異なります。折角、補助金を活用したいと考えるのであれば、できるだけ採択される可能性を高めて望みたいものです。疑問や不明点があれば、まずコンサルタントに相談してみることをお勧めいたします。CB研では、様々な業界/業種に所属するコンサルタントがご支援可能です。ものづくり補助金の制度やCB研でのご支援内容についてご興味のある方はこちらを参照ください。
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吉村 寿恒(中小企業診断士)