設備投資や新商品開発には高額のコストが必要ですが、国の補助金をうまく活用することでそれらのコストをまかなうことができます。この記事では、中小企業経営者の皆様が「採択される補助金申請書」をつくるためのポイントを説明します。
目次 |
1.審査員から見た「採択」とは
2.経営計画書(様式2)に書くべきこと 3.補助事業計画書(様式3)に書くべきこと 4.まとめ |
ご存じのとおり補助金とは国民の皆様の税金から捻出されるため、事業者の採択を行う国に対してはその運用の適正性が厳しく求められます。この適正性とは、補助金の「目的」として公開されています。
平成28年度の小規模事業者持続化補助金を例にとると、公募要領に「事業の目的」が書かれています。その中で重要なポイントは、「持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取り組み」を支援するということです。
採択を決定する審査員の立場としては、この目的にかなった事業こそ国民の税金を使うにふさわしい、と判断するわけです。つまり、この重要なポイントをきちんとおさえた申請書でないと採択されないということになります。申請書を書くうえで大事なことは、このポイントをおさえていることを誰が見ても理解できるか、ということです。
その視点で考えると、補助金申請書に書くべき内容は、「持続的な経営をするための計画があるか」と、「その計画に基づいた販路開拓等の取り組みか」という二つの要素に分けることができます。この二点を経営計画書(様式2)と補助事業計画書(様式3)にきちんと書くことで、採択される確率が大きく高まります。
平成28年度の小規模事業者持続化補助金では、事業者が力を入れて書くべき申請書は経営計画書(様式2)と補助事業計画書(様式3)の二点でした。
まずは経営計画書(様式2)について説明します。ここまでに説明したとおり、経営計画書(様式2)は「持続的な経営をするための計画」である必要があります。公募要領にある目次は、
「1.企業概要」、「2.顧客ニーズと市場の動向」、「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」、「4.経営方針・目標と今後のプラン」の4点です。
この目次に沿って自社の持続可能性を説明する必要があるわけです。企業の持続可能性とは、お客様が商品・サービスを買ってくれる状態を継続的に拡大させていくことです。そのために、お客様は誰か、自社の商品・サービスをなぜ買ってくれるのか、これからも買い続けていただくにはどうすればいいか、を整理し客観的に証明できることが必要です。
図でイメージすると次のようになります。なお、「1.企業概要」は自社の自己紹介だと思ってください。
補助事業計画書で書くべきことは、「経営計画に基づいた販路開拓等の取り組み」であること、です。同じく公募要領の目次を見ると、任意記入を除く主なものは、
「1.補助事業で行う事業名」、「2.販路開拓等の取組内容」、「4.補助事業の効果」と「経費明細表」です。
補助事業は経営計画に基づく必要があるので、様式2で書いた内容と関連が無いといけません。具体的には、補助事業とその効果が、「4.経営方針・目標と今後のプラン」の一部となっている必要がある、ということです。
どうすればこのことを審査員に理解してもらえるでしょうか。それには、補助事業の内容と効果が具体的であることが重要です。具体的にどんな販路開拓に取り組んで、新しいビジネスチャンスとして何人の新しいお客様、いくらの売上・利益を獲得するのか、が明らかに説明されていると、補助事業が持続的経営に貢献していることを審査員が理解でき、採択につながります。「2.販路開拓等の取組内容」と「経費明細表」により、補助事業で何をするかを具体的に書き込んでください。
このように、採択される補助金申請書には、「お客様と自社を客観的に分析した経営計画」と、「取組内容の具体的な説明」が必要です。採択を決める審査員が取組内容をきちんと理解し、あなたの会社が持続的に成長する姿をイメージできるような補助金申請書を作成してください。
原 健一郎(中小企業診断士)