建設業については、国土交通省(各地方整備局)から経営力向上計画の認定を受けると、固定資産税の軽減や金融支援(低利融資、信用保証)や補助金申請時の優遇が受けられます。認定のポイントは、事業分野別指針で定められた指標・目標と実施事項が申請書に的確に記載されているか否かです。
目次 |
1.指針で定められた指標・目標と実施事項について
2.実施事項(教育訓練の実施、ICT施行の実施等)の記載例 3.実施事項(生産性向上に資する取組の導入、環境負荷軽減に配慮した事業の展開)の記載例 4.まとめ |
建設業では、指針に基づき、以下のいずれかの指標を選択する必要があります。
- 「労働生産性・基本」:(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数×一人当たり年間就業時間)
- 「労働生産性・推奨」:(完成工事総利益+完成工事原価のうち労務費+完成工事原価のうち外注費)÷年間延人工数
- 「労働生産性・簡易」:(完成工事総利益+完成工事原価のうち労務費)÷直庸技能労働者数
上記指標に対しては、経営力向上計画の実施期間に応じ、以下の伸び率以上の目標を設定する必要があります。
3 年:1%以上
4 年:1.5%以上
5 年:2%以上
また、指針で定められた実施事項は、建設業の課題である「人への投資」や「経営のイノベーション」に関係する以下の項目になります。
指針によれば、「一 人に関する事項 イ 教育訓練の充実」については、
「一人あたり生産性の向上に向け、地域の教育訓練施設等も活用し、新規入職者の早期戦力化、登録基幹技能者の養成等の教育訓練の充実に取り組む」
ことが求められています。この要件を満たすには、以下のような事例の記載が必要です。
「新入社員を含む若手社員に対し、免許・資格取得のための講習を勤務時間内において積極的に受講させる(車両系建設機械技能講習、土木施工管理技士等)」
また、指針の「四 新技術・工法の積極的導入 イ ICT施工の実施、コンクリート工における生産性向上技術の活用等、i-Constructionの推進」については、
「ICT建機の導入、ICT施工の実施、ICT環境の整備、ICT対応人材の育成、コンクリート工における生産性向上技術の活用等、i-Constructionの推進に積極的に取り組む」
ことが求められています。この要件を満たすには、以下のような記載が必要です。
(記載例)
「ICT土工の受注に向け、レーザースキャナーや3Dデータ作成ソフトウェアを導入し、最新機器を活用した起工測量や3次元設計データ作成に対応できる技術者の育成に取り組む」
指針の「四 新技術・工法の積極的導入 ハ 生産性向上に資する取組の導入」については、
「建設資材メーカー、建機メーカー等、建設業と関連する異業種と連携し、作業効率改善に資する高機能素材、機器等の開発・活用等の試行・検討等に取り組む」
ことが求められます。
また、「六 建設企業のイメージ向上につながる取組 ロ 環境負荷軽減に配慮した事業の展開」については、
「省エネルギー、温室効果ガスの排出削減等に配慮した施工の実施等環境負荷軽減に配慮した事業展開に取り組む」
ことが求められています。これらの要件を満たすには、以下のような記載が必要です。
(記載例)
「操作性に優れる新型のバックホウを導入し、現場作業の効率を上げることにより、実際の土木工事現場における生産性向上を図る。また、新型バックホウは、現在利用しているバックホウと比べ、燃費性能が高く、かつ、排出ガスに配慮されていることから、環境負荷軽減につながる。」
経営力向上計画の認定制度は、経営革新計画や補助金申請などとは異なり、認定において審査機能を設けていません。記載要件をしっかりクリアしていれば認定されます。経営力向上計画は事業計画としても活用できるので、記載例を参考に、ポイントを踏まて認定に向けてチャレンジしてください。
浅井 幹夫(中小企業診断士)