業務効率化・売上アップの促進を図るITツール導入について経済産業省が経費の一部を補助するIT導入補助金が2017年より実施されています。比較的新しく採択されやすい補助金施策となりますので、概要や特徴をご紹介します。
目次 |
1.IT導入補助金の概要
2.他の補助金施策と異なるIT導入補助金の特徴 3.IT導入支援事業者の選択と今後について 4.まとめ |
本施策は、一部の例外を除いた中小企業・小規模事業者(以下、「補助事業者」という)と、ITベンダー・サービス事業者(以下、「IT導入支援事業者」という)の二人三脚で事業のIT化を進め、経営力の向上・強化を図ることが目的です。そのため、他の補助金施策と異なり、補助事業者とIT導入支援事業者が協力して申請をしていくという事業スキームとなります。補助事業者が、本施策の申請で行うことは、主にITツール導入の相談、代理申請の依頼となっていますが、事前にIT導入支援事業者の選択を行う必要があります。
補助対象は、IT導入支援事業者がIT補助金の対象として登録したITツールのソフトウェア、導入・保守費用が対象となります。IT導入支援事業者が扱うソフトウェアでも、登録されていないものは対象外になります。補助率および補助上限、下限額は下記の通りです。
2018年度実施分 2019年度実施分 補助対象経費区分 サービス・ソフトウェア 導入費*1
サービス・クラウド利用費 導入関連経費等*1
補助率
2/3以下
1/2以下
補助上限額・下限額 上限額:100万円 下限額:20万円
上限額:50万円 下限額:15万円
*1 ソフトウェア選択はIT導入事業者が登録済みのツールのみ対象
・ITに詳しくない方に特に活用いただきたい支援施策です
本事業の一番大きな特徴として、専門家であるIT導入支援事業者の存在があります。IT化による経営力強化に詳しくない方でも、円滑に補助事業を進めていけるようにスキームに組み込まれています。補助金申請に係る事務作業についても、IT導入支援事業者が代行しますので、補助事業者に係る負担は小さく、早ければ1日程度で補助金申請が完了します。
また、補助事業後も5年間の報告義務が発生しますが、これをIT専門家へ相談できる機会として捉えていただければ、さらなる経営力強化が見込めることになります。
IT導入支援事業者は、公募により決定されていますので補助事業者を支援したい事業者ばかりです。サポート・アフターフォローを有効に活用しましょう。
・採択率が他の補助金に比べて圧倒的に高く、採択結果も早い
2019年度補正予算では、前年から事業規模を拡大して、予算額は約5倍の500億円となりました。公募回数は3回となり、採択数は前年の約9倍の見込みです。先日、公募1回目の採択結果の発表がありましたが、約9250の事業者が採択されています。この採択者数を全て上限額50万円の補助と仮定しても、概算約50億円となり、予算額の約1割分しか消費していません。残り2回公募があるとしても予算額にまだ余裕があるため、採択率は90%以上と言われています。また、公募締切から約1週間程度で採択決定が決まることも他の補助金支援施策にはない特徴です。これは、交付申請がWebベースとなり、その結果採点の一部がIT化されているためと考えられます。
IT導入補助金の採択率
公募 | 採択率(推定) | 備考 | |
2018年度補正予算 | 1回目 | 90%以上 | 公募2回目は
残予算で調整 |
2回目 | 25%~30% | ||
2019年度補正予算 | 1回目 | 90%以上 | |
2回目 | 公募中 | ||
3回目 | 公募予定 |
・IT導入支援事業者の選択は慎重に
先述の通り、IT導入支援事業者は、補助金申請を通して、頼りになるIT専門家として良いパートナーとなってくれる可能性があります。また、採択後にIT導入支援事業者を変更することはできません。そのため、IT導入支援事業者の選択はできるだけ慎重に行うことがポイントです。ITツールの選定も重要ですが、少なくとも相手のホームページを訪問してどういう事業者か確認いただくことをお勧めします。IT導入補助金のホームページから検索することが可能ですが、検索画面で、事業計画のサポートが可能である場合は今後の話がしやすくなるかもしれません。
・今後のIT導入補助金について
2019年度IT導入補助金の予算は、多くの中小企業や小規模事業者を支援するような仕組みになっています。来年度以降もIT化促進のための支援施策は実施されると思いますが、同様の状況になるとは限りません。一方で、同年度の重複採択はされませんが、年度が替わることでまた、補助金による支援を受けることが可能となります。IT補助金を検討している・してみようと思っている事業者の方は今がベストタイミングです。
今回は、IT導入補助金についてご紹介をしました。申請に係る負担も少ない割に、採択率は現行の補助金施策の中でトップクラス。さらには、IT専門家との接点を持てる機会にもなってしまうという素晴らしい施策です。補助金額と補助率がもう少し上がれば、さらに良いですが、来年度の施策に期待しましょう。
コンサルティング・ビジネス研究会 執筆チーム(中小企業診断士)