補助金・助成金が採択されたのちも、実際に支給されるまでには、複雑な手続きと煩雑な書類の提出が必要で、事務局とのやり取りも負担になりがちです。本記事では、この長く苦しい道のりをいかに乗り越えるかについて考えます。
目次 |
1.補助金・助成金申請から支給までには長い時間と煩雑な書類が必要!
2.補助金・助成金の事務局とのやり取りは骨が折れる! 3.補助金・助成金における専門家の役割は申請支援だけではない! 4.まとめ |
単にお金がもらえるだけでなく、事業の改善に結び付けるなど、補助金・助成金はメリットの多い資金調達手段ですが、申請から支給までには、意外に長い時間がかかります。
例えば、平成28年度補正予算「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」(以下「ものづくり補助金」の場合、募集から補助金支給までの期間は、図表の通り1年3ヶ月以上にも及びます。
補助金が採択されても、支給を受けるためには、期日までに各種書類を取りそろえて提出し、検査を受ける必要があります。ものづくり補助金の場合は、以下のような書類の提出が想定されます。
特に、「2.」~「4.」の書類の日付は、事業開始から完了までの期間内である必要があり、期間外の費用支出は補助対象外であることに注意が必要です。
- 補助事業に関する報告書、附属書類
- 購入先との手続きに関する書類(見積依頼書・見積書(金額によって相見積が必須な場合も)・注文書・納品書等)
- 費用支出の詳細を示す書類(専門家派遣報告書、旅費明細書等)
- 支払の証拠となる書類(振込伝票等)
補助金・助成金の手続きで意外に骨が折れるのは、事務局担当者の方々との折衝です。
補助金・助成金に関する事務手続は、各補助金・助成金ごとに「手引き」にまとめられています。作成が必要な各種書類のひな型もエクセルやワードの形式で準備されており、入力するだけで必要な書類を整えることができます。
しかし、書類作成や証拠書類収集の際、手引きに記載された数多くのルールをすべて把握するのは困難であり、手引きを見ただけでは記入方法が不明確な場合もあります。そのため、ベストを尽くして注意深く取りそろえた書類を提出しても、事務局から大量の修正を要求される場合がしばしばです。
事務局から提示される修正項目は形式的かつ広範で細部にわたることもあり、修正を要求される側としては何かとストレスがたまるものです。しかし、定められたルール通りに補助金支給までのプロセスを進めることが事務局の役割であることを考えれば、担当者の方々も悪気があって修正要求をしているのではないのですから、指摘通りに書類の修正を粛々と進めるしかありません。
補助金・助成金を申請したことのある方であれば、中小企業診断士などの専門家は、補助金・助成金の申請支援の際にお役にたち、補助金・助成金が採択されることのみが成果であると考えるかもしれません。
しかし筆者は、採択後の手続きこそ、専門家の果たす役割は大きいと考えます。具体的には、補助金・助成金採択から支給までのプロセスにおいて、専門家は以下のような多様な役割を果たすことができます。
- 各種報告書類(交付申請書、補助事業遂行状況報告書、補助事業実績報告書、補助金精算払請求書、各種附属書類等)作成支援
- 各種証拠書類等(見積書、注文書、専門家派遣報告書、振込伝票等)取りまとめ支援
- 各種手続き(事業の開始と終了、中間監査、確定検査等)の進捗管理支援
- 事務局との折衝支援(ただし、補助金・助成金によっては「専門家等からの問い合わせを受け付けない」とされている場合もあり、注意が必要です)
したがって、補助金・助成金採択後の手続きにおいても専門家を活用することで、補助金・助成金に係る中小企業者の皆様の事務負荷軽減に大きく貢献できるのではないでしょうか。
補助金・助成金活用の際には、申請支援の場面のみではなく、採択後の事務負荷を軽減し、本業に専念するためにも、採択から支給までのプロセスでも中小企業診断士などの専門家活用を考えてはいかがでしょうか。
多賀 俊二(中小企業診断士)
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