今回は、この「省力化投資補助金」の概要と活用イメージについて、解りやすくお伝えします。
目次 |
1.省力化投資補助金とは
2.補助上限額と補助率等 3.補助対象経費と補助事業実施期間について 4.基本要件について 5.応募申請・手続きの流れ 6.その他の重要なポイント 7.まとめ |
本補助金は、IoT・ロボット等のデジタル技術を活用した機械・設備の導入により、人手不足解消と省力化を図る中小企業等を支援するものです。
【活用例】
・製造業における、ロボット等を用いた製造ライン無人化による作業工程の省力化
・小売業における、セルフレジやオンライン決済システム導入による接客業務の効率化
・建設業における、施工管理システム導入による現場管理の省力化など
補助上限額は、従業員数によって以下のように設定されています。
項目 | 内容 |
補助上限額 | 従業員数5人以下 750万円(1,000万円)※
従業員数6~20人 1,500万円(2,000万円)※ 従業員数21~50人3,000万円(4,000万円)※ 従業員数51~100人5,000万円(6,500万円)※ 従業員数101人以上 8,000万円(1億円)※ |
補助率 | 中小企業:1/2(最低賃金引上げ特例:2/3)
小規模・再生事業者(以下の参考に記載):2/3 1,500万円を超える部分は1/3 |
(参考)「再生事業者」とは
中小企業活性化協議会等から支援を受け、応募申請時において再生計画等を「作成中」もしくは「策定済」である事業者(詳細は以下のURL参照)。
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/definition_rehabilitation_business_ippan.pdf
ポイント
・単価50万円以上の機械装置等の設備投資が必須となっており、本格的な省力化が求められています。
・受け取った補助金の収益納付は求められません。
項目 | 内容 |
補助対象経費 | 機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、
専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、 外注費、知的財産権等関連経費 |
補助事業実施期間 | 交付決定日から18か月以内(ただし採択発表日から20か月以内) |
省力化投資補助金の申請には、以下の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画の策定が必要です。
(1) 労働生産性(※1)の年平均成長率を+4.0%以上増加とする
※1 労働生産性は「付加価値額÷労働者数」として計算されます
(2) 1人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業を実施する都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上とする、または給与支給総額(※2)の年平均成長率を+2.0%以上増加とする
※2 給料、賃金、役員報酬、賞与、各種手当など、給与所得として課税対象となる経費(福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)
(3) 事業場内最低賃金を、事業を実施する都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準とする
(4) 従業員が21名以上の場合は、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、公表する
事前準備から効果報告までは以下の流れとなり、ものづくり補助金と似た流れになっています。
(1) 基本要件未達時の補助金返還
基本要件の(2)または(3)を満たすことができなかった場合は、未達成率に応じて補助金返還を求められることがあります。
ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合には、補助金返還が免除されます。
(2) 省力化指数の算出
設備導入による省力化効果を数値化した「省力化指数」の算出と、「投資回収期間」の明示が求められます。
省力化指数とは、補助事業者の業務領域において、当該事業計画によって業務量がどの程度削減されるかを示す割合です。
算出方法の詳細については、以下の「手引き」を参照ください。
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/oubo_manual_ippan.pdf
(3) 加点項目の活用
審査においては、以下のような加点があります。
特に②③④は取得しやすいと言われていますので、積極的な活用をお勧めします。
①事業承継又はM&Aを実施した事業者(申請者)に対する加点
②災害等加点(事業継続力強化計画の認定)
③成長加速マッチングサービスに登録している事業者に対する加点
④賃上げ加点(基本要件を上回る賃上げ目標を設定)
⑤えるぼし加点/くるみん加点(女性活躍や子育て支援に関する認定)
省力化投資補助金は、人手不足という現代の経営課題に正面から取り組む、新たな補助金制度です。
採択された事業者には、単なる設備投資にとどまらず、デジタル技術を活用した省力化と設備投資によって、生産性を向上させ持続的な賃上げを実現することが求められます。
そのため、申請にあたっては、省力化効果を具体的に算出し、精度の高い事業計画を策定する必要があります。
採択されるためには将来の成長を見据えた戦略的な省力化投資の計画立案がポイントとなります。
省力化投資補助金をご検討の際は、ぜひ当研究会にご相談ください。
コンサルティング・ビジネス研究会 辰巳太兵衛(中小企業診断士)
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