令和8年5月25日から「事業性融資推進法」が施行されました。
これにより「企業価値担保権」を活用した、資金調達(融資)が既に始まっています。
企業価値担保権とは、土地や建物などの不動産や個人保証に過度に依存せず、「企業の価値」を担保にできる仕組みです。

| 目次 |
| 1.企業価値担保権とは 2.企業の価値とは 3.どんな企業に役立つのか 4.活用事例 5.制度を利用するために準備すべきこと 6.まとめ |
令和8年5月25日に「事業性融資推進法」が施行されました。
この法律によって、企業の価値を担保にした借入が可能となりました(企業価値担保権)。
これまで融資を申し込んだ際に、銀行の担当者から
「担保に出せる不動産はありますか?」
「社長の個人保証をお願いします」
と言われた経験があるかと思います。
今回の新制度は、まさにこれまでの常識を覆すものです。
「銀行は、いったい何を担保にお金を貸してくれるの?」
きっと、そんな疑問が浮かびますよね。
その答えこそが、新制度の要である「企業の価値」なのです。
これまでの融資審査では、過去の売上や利益が基準となり、担保としての不動産や個人保証が求められることがありました。
しかし、実際の会社経営の現場はどうでしょうか。
数字だけでは測りきれない「企業の価値」が存在しているはずです。
たとえば、次のような強みをイメージしてみてください。
- 他社には真似できない独自の技術や製造ノウハウ
- 創業以来、長年かけて築き上げた顧客基盤や継続的な契約関係
- 現場を最前線で支える熟練した従業員の技能や、強靭なチームワーク
- 地域社会で長年培ってきた高い信用力やブランドイメージ
新しい制度である企業価値担保権の最大のポイントは、こうした目に見えない価値が、融資の担保として評価される点にあります。
①スタートアップ・IT企業
独自のアルゴリズムや、特許などの知的財産を持つが、実績が乏しく、金融機関からの資金調達が難しい企業です。
過去の実績ではなく「将来性」と「将来のキャッシュフロー」を担保として評価してもらえる可能性があります。
② 事業承継を控えた企業
後継者への事業承継を予定している企業です。
従来の融資では、後継者が個人保証を求められることがありました。
この制度を活用した融資では、個人保証に過度に依存しない資金調達が期待されます。
それにより、後継者に重い個人負担を背負わせずに、事業承継を進めることができるようになります。
③ 赤字や債務超過の企業
赤字や過剰債務であっても、独自の技術や顧客ネットワークに価値がある企業です。
過去の決算の数値だけでは評価されにくい場合でも、金融機関からの伴走支援を受けながら、事業の再建を進められる可能性が広がります。
④ 大型投資を狙う企業
一定の業歴や実績があり、さらなる事業規模の拡大を目指す企業です。
具体的には、他社の買収や新規分野への参入など、
大型投資を計画している企業です。
事業全体の将来性やシナジーを説明することで、より大規模な資金調達につながる可能性があります。
⑤ 老舗の旅館
長年培ったブランド力・食材の目利き・立地の希少性などの価値を持つ老舗旅館などです。
こうした目に見えにくい価値を整理することで、会社全体の価値として評価される可能性があります。
①東邦銀行の事例
福島県のクラフトジン蒸留所である㈱Kokageに対し、企業価値担保権を活用した融資を実行しました。
独自性の高い製造ノウハウや、地域資源を活用した商品力とブランド力、そして緻密な事業計画から、企業の将来性が高く評価されました。
②西京銀行の事例
山口県の中森農産阿東㈱に対して、企業価値担保権を活用した伴走型の金融支援を始めました。
有機米の生産における競争優位性や、AI技術を活用した独自の生産管理といった事業モデルが高く評価されました。
① 強みの言語化
自社のどの強みが、どのように顧客の課題を解決し、結果として将来の利益に直結していくのか。
また、他社と比べて何がどう違うのかを、言語化する必要します。
② 実現可能性の高い経営計画
今後3年から5年という期間で強みをどのように活かし、結果として毎月・毎年いくらの現金が手元に残っていくのか。
根拠のある数字に落とし込んだ、中期経営計画の策定が必要です。
③ 管理体制の強化
金融機関は将来性だけでなく、現在の財務状況も厳しくチェックするため、月次決算を早期に集計できる仕組みづくりが重要です。
④ 金融機関との関係づくり
最も重要なのが、金融機関との継続的かつ双方向の対話です。
自社の事業内容や将来計画を日頃から共有しておくことで、共に成長を目指すパートナーとして金融機関を巻き込んでいきましょう。
企業価値担保権のスタートは、銀行の審査基準が変わるだけでなく、経営者様ご自身が、自社の本当の価値を見つめ直す絶好の機会です。
過去の数字や担保の有無ばかりに気を取られる時代は終わりました。
目に見えない価値と将来の稼ぐ力が、正当に評価される時代です。
次の成長ステージへ確実な一歩を踏み出すために、自社の価値を言語化し、金融機関に伝える準備を今日から始めましょう。
コンサルティング・ビジネス研究会 上野 光夫(中小企業診断士)

