人材不足の解決策と助成金制度のご紹介

人材不足により労働環境は厳しさが増しています。適切な対策を講じることで、働きやすい環境を形成することができます。「評価や待遇の不満を解消し、労働者の意欲を促進する」「雇用の間口を広げる」などです。そして、これらの取り組みを支援するため様々な助成金制度が整備されています。

人材不足の解決策と助成金制度のご紹介

目次
1.厳しさが増す労働環境

2.評価や待遇の不満を解消し、労働者の意欲を促進する

3.雇用の間口を広げる

4.まとめ

1.厳しさが増す労働環境

厚生労働省によると2017年12月の有効求人倍率(季節調整値)は1.59倍(※1)で高水準を更新し続け、企業経営への影響が深刻度を増しています。
この深刻度は、次の図に示す、エン・ジャパンが2017年6月30日に発表した調査結果の第3位に「残業や休日出勤が多くて辛かった」と上位にランクインしていることからも、人手不足により労働者の負担が増すことにより退職してしまい、更に労働者の負担が増していくという負のスパイラルに陥っています。

退職する理由

この負のスパイラルを打破するためには、
・退職者を抑制する
・戦力となる人材を確保していく
ことが先決です。

そのためには、何を取り組んだら良いのでしょうか。以下、人材の流出の抑制と確保の観点から解決策を提案いたします。

※1:厚生労働省一般職業紹介状況(平成29年12月分及び平成29年分)について
※2:2017年5月1日から31日の間、総合求人・転職支援サービス『エン転職』ユーザを対象に実施した「退職理由」に関する5,796名の回答結果

2.評価や待遇の不満を解消し、労働者の意欲を促進する

前述したエン・ジャパン が発表した回答結果をより詳しく分析しますと、第1位は給与の低さ、第2位は評価や人事制度への不満と労働者の待遇によることがわかります。

・社長の一存で評価が決定されてしまう
・何が評価されているのか不透明
・何を目指したらよいかわからない

労働者が納得性のある評価を受けていない、という不満が積み重なり退職に至ってしまうのかもしれません。こういった事態を避けるためにも、以下の3つの施策を実施することで、企業が労働者に求める評価基準とキャリアの道標を労働者に示すとともに、労働者の能力開発を支援してはいかがでしょうか。

①キャリアマップ、職業能力評価シートの策定
②セルフキャリアドック制度の導入
③教育訓練休暇等制度の導入

 

①職業能力評価基準(キャリアマップ、職業能力評価シート)の策定

職業能力評価基準とは、業種別、職種・職務別に企業で実際に求められる実践的な職業能力を具体的に示すための基準で、「知識」、「技術・技能」、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」などで構成されます。これを設定しておけば次の図(※3)の通り、採用、人事評価、能力開発など様々な場面で活用することができます。

職業能力評価基準(キャリアマップ、職業能力評価シート)の策定※3:厚生労働省「職業能力評価基準について

 

職業能力評価基準は、業種別に以下のサイトよりダウンロードできます。

厚生労働省「職業能力評価基準ポータルサイト

実務的には、以下のサイトよりモデル職業能力評価基準を使用したキャリアマップと職業能力評価シートを使用して自社向けにカスタマイズしたほうが取り組みやすいと思います。

厚生労働省「キャリアマップ、職業能力評価シートのダウンロード

例えば、アパレル業(販売)テンプレートを開きますと、以下の図のようにキャリアマップのフローが示されていますので企業側:全体像を意識して各職種、階層の能力基準を設定しやすくなる労働者側:社内での昇進に必要な仕事への経験や順序などをイメージしやすくなるといったメリットがあります。

アパレル業のキャリアアップフロー

 

職業能力評価シート見本

上記のテンプレートを参考に、自社向けにキャリアマップと職業能力評価シートをカスタマイズすることにより、公平かつ納得感のある評価が期待できます。

 

②セルフキャリアドック制度の導入

 これはキャリアコンサルタントがジョブカードを活用してキャリア・コンサルティングを定期的に提供する制度です。

キャリア形成のプロフェッショナルが労働者と面談することにより、労働者が自らの役割と仕事への特性への気づきを促し、主体的にキャリアプランを考え、仕事やスキルアップに取り組もうとする意欲を高める効果がありますし、第三者を介在させることにより客観的に自らを省みるきっかけことにより納得感を醸成し、コミュニケーションを円滑にする効果も期待できます。

 

とはいっても、キャリア・コンサルティングを依頼する費用を捻出できない!!

 

そんな方に朗報です。平成30年3月までにセルフキャリアドック制度を導入すると、47.5万円(生産性要件を満たせば60万円)の助成金を受け取ることができます。この助成金制度概要は、以下のサイトのキャリア形成支援制度導入コース⇒セルフキャリアドック制度をご覧ください。

厚生労働省「人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)

*セルフキャリアドック制度の導入による助成金制度は、平成30年度には廃止されてしまうため時間が残されていないことと、申請手続きに必要な書類を準備する必要がありますので、専門家に依頼されることをお勧めいたします。

 

③教育訓練休暇制度の導入

 外部機関の教育訓練やキャリア・コンサルティングを受けるために必要な休暇や勤務時間の短縮を労働者に与えることで、自発的な能力開発を促進するための制度です。

キャリアマップ、職業能力評価シートとセルフキャリアドック制度により、自発的に能力開発をしようとする労働者を支援するためにも、この教育訓練休暇制度を導入されてはいかがでしょうか。この制度を導入することで、労働者の生産性が向上するだけでなく、キャリアパスに沿って自己成長しようとする労働者の意欲が生まれることで、労働力の長期安定化が期待できます。

教育訓練休暇制度を導入すると、47.5万円(生産性要件を満たせば60万円)の助成金を受け取ることができます。この助成金の制度概要は、以下のサイトよりキャリア形成支援制度導入コース⇒セルフキャリアドック制度をご覧ください。

厚生労働省 人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)

*教育訓練休暇制度の導入による助成金制度は、平成30年度も存続することが決定いたしました。

 

①②③の施策を実施することで、退職理由となる不満を解消し、生産性の向上ならびに労働力の長期安定を実現することが可能になります。

3.雇用の間口を広げる

 新卒、第二新卒、中途入社も含めて採用は激戦化しています。人材を確保するにも、以下の観点で雇用の間口を広げてはいかがでしょうか。

①パートやアルバイトなど非正規雇用労働者を正社員に登用する

 非正規雇用労働者は業務量応じて柔軟に調整できることが企業側のメリットですが、待遇の低さや 雇用の不安定さから、長期的に続けるモチベーションが低下しやすく、仕事を辞めるハードルも低く、長期定着に繋がりにくいといった声が聞こえています。

優秀な非正規雇用労働者を正社員に登用する道を拓くことで、次のメリットがあります。
・人材のミスマッチを防ぐことができる
・非正規雇用労働者のモチベーションアップが期待できる
・育成を進めてきた人材の安定確保につながる

なお、一定の要件を満たすことで厚生労働省のキャリアアップ助成金(正社員化コース)が適用され、以下の金額の助成金(返却義務なし)が支給されます。

有期契約社員等を正社員等に転換または直接雇用した場合に助成される金額は次のとおりです。

有期→正規:1人当たり57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
有期→無期:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
無期→正規:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)

*<>は生産性の向上が認められる場合の額、()は大企業の額

この助成金の制度概要は、以下のサイトよりご覧ください。

厚生労働省「キャリアアップ助成金 正社員化コース

 

②高齢者を雇用する

 LIFE SHIFT(著者リンダ グラットン,アンドリュー スコット)によると、

人の平均寿命は伸び続け、予測によれば、2107年には主な先進国では半数以上が100歳よりも長生きするのだという。

すると、定年退職後でも労働意欲と体力を有している高齢者が今後増えていくことになります。

能力や適性がマッチングできれば、高齢者を雇用することにより、培ってきた経験や技能を活かすことができますし、若手労働者への技術承継を促すことで貴社の技術力や生産力を向上させることができます。さらに高齢者自身が収入に対する所得税を納めるようになれば、税収が増えますので国の財政的な面でも大きなメリットになります。

なお、一定の要件を満たすと、

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)が適用され、70万円(短期労働者は50万円)支給されます。

*中小企業事業主以外は60万円(短期労働者は40万円)になります。

この助成金の制度概要は、以下のサイトよりご覧ください。

厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

まとめ

人材不足により労働環境は厳しさが増していますが、退職理由を分析し、適切な対策を講じることで、人材流出を抑制し、生産性を向上させ、正社員登用の間口を広げることで働きやすい環境を形成することができます。これらの取り組みを支援するため様々な助成金制度が整備されています。不明な点があれば、補助金や助成金に精通する専門家に相談することも検討してみるとよいと思います。

執筆者

コンサルティング・ビジネス研究会 執筆チーム(中小企業診断士)

—–



お問い合わせはこちら
補助金、経営支援などお問い合わせは上のボタンをクリック!
お問い合わせフォームに必要事項をご記入ください。

Consultoria(コンサルトリア)では、事業計画作成、補助金申請、WEB集客等、多数支援をしております。コンサルタントの支援をご希望される方は、お気軽にご相談ください。


コメントは受け付けていません。