企業にとって、設備投資は、戦略的経営基盤拡大や生産性向上を図るための有効な手段です。設備投資資金調達を実現するには、金融機関の厳格な融資審査をクリアすることが、カギになります。設備投資資金調達を円滑に行うため、金融機関の融資審査方法を解説します。
目次 |
1.金融機関の融資審査スタンス
2.設備投資計画の内容検証方法 3.設備投資資金融資の審査方法 4.まとめ |
金融機関は、設備投資融資に対して、慎重かつ多面的に審査を行います。理由は、①投資金額が大きく、投下資本の回収が長期にわたること、②投資効果の予測が難しいこと、③当初計画通リの効果が得られない場合のリスクが大きいことです。
金融機関は、まず設備投資計画の内容を検証します。
(1)設備投資の種類
設備投資は、その目的により、審査のポイントも異なります。種類を大別すると、①能力増強投資(新製品開発のための研究開発、新規分野開拓のための新規事業、増産・販売拡大を目的とした拡張投資)、②合理化・省力化投資(省力化効率化による人件費削減)、③更新投資(老朽設備更新など修繕的投資)、④非生産型投資(環境対策投資、社員福利厚生)になります。
(2)設備投資の必要性
設備投資の必要性について、①企業の中長期ビジョンと合致するか、②社長の思いつきでないか、③他案件と比較して優先順位は高いか等の観点から、検証します。
(3)設備投資の妥当性
設備投資の妥当性について、①外部環境(景気、業界、需給関係)、②内部環境(販売力、技術力、資金調達力)、③投資規模、④投資のタイミング、⑤阻害要因、リスクについて検証します。
(4)設備投資効果の測定
設備投資の効果を種類に応じて、①売上増加、②コスト削減、③売上増加+コスト削減の観点から、測定検証します。具体的な計算手法としては、①投資回収期間法、②DCF法等があります。
(1)資金調達計画の妥当性
設備投資資金計画の妥当性を①設備投資資金所要金額に対する自己資金と外部調達の割合、②設備投資に伴い発生する増加運転資金の加味、③資金調達方法(借入orリース)、④資金調達先の分担等の観点から行います。
(2)返済能力
当該設備投資案件単体及び会社全体の事業収支を試算し、借入返済能力の検証を行います。事業収支には、①販売計画、②コスト削減効果等を織り込み、返済原資は、「経常利益+減価償却+引当金+増加運転資金―社外流出(税金、配当金、役員賞与)」にて計算します。基本的には、当該設備投資案件単体での返済能力があることが前提になります。
(3)担保
金融機関は、設備投資融資のリスクの補完のため、必要に応じて担保を徴求します。具体的には、①設備投資対象となる不動産、動産(機械、車両、船舶等)、②有価証券担保、③売掛債権担保等です。
金融機関は、設備資金の融資審査を厳格かつ多面的に行います。金融機関の審査のポイントを理解することにより、設備投資計画の妥当性、設備資金調達方法の妥当性について、まず、自社で判断することができます。そして、金融機関に対して自らの判断根拠をポイントにそってまとめ、説明することにより、設備資金調達を円滑に行うことが可能になります。
キザイ株式会社 寺田 孝雄(中小企業診断士)
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