「やらなければ」と思いつつ後回しにしてしまう仕事、ありませんか?
報告書・議事録・提案資料・メール文の作成SNS投稿など急ぎではないけれど手間がかかる、そうした「後回し業務」は気づけば時間と気力を奪う存在です。
生成AI(ChatGPTなど)は、文章の要点整理・構成案の作成・初稿(たたき台)の作成といった機能があり、後回し業務を短時間で進める“実務支援ツール”として非常に効果的です。その結果、皆さんは「ゼロから考える時間」を減らし、本来やるべき仕事に集中できるようになります。
本号では、生成AIを活用して「月100時間を生み出す」ノウハウと、誰でも実践できるチェックポイントをご紹介します。

| 目次 |
| 1.月100時間削減できる後回し業務
2.生成AIで変わる後回し業務の実例 3.生成AI活用の決め手は「プロンプト(指示)」 4.まとめ |
「月100時間削減」と聞くと大きく感じられるかもしれません。しかし、生成AIが最も効果を発揮する分野は毎日・毎週発生し、つい後回しにしがちな業務です。
例えば
・議事録や報告書を“書こうと思いながら”手がつけられない
・提案資料の構成がまとまらず、最初の1ページで止まってしまう
・メール文の作成に想像以上の時間がかかる
・提出物の加筆修正に思わぬ時間を取られる
こうした「後回し業務」は、1つひとつは小さくても、日常の中で積み重なっていきます。
生成AIはこれらの業務で必要となる要点整理・構成づくり・たたき台の作成 を短時間で行えるため、“1回あたり数分〜数十分” の短縮が自然と生まれます。
例えば一般的な業務の感覚では、次のような短縮が見込めます。
| 日報の作成 | 1回あたり 10分の短縮 |
| 見積書の作成 | 1回あたり 5分の短縮 |
| 議事録の要点整理 | 会議1回で 20分の短縮 |
| 報告書のたたき台作成 | 1件あたり 30分の短縮 |
| 提出物の加筆修正 | 1件あたり 30〜45分の短縮 |
| メール文の作成 | 1通あたり 5〜10分の短縮 |
これらは日常で実際に「毎日・毎週行われている業務の時間感覚」に基づいた短縮効果です。そして、この “1回あたりの短縮” が日々積み重なれば、月に100時間の削減は、決して大げさな数字ではありません。
浮いた時間を本来注力すべき 売上向上・判断・改善に振り向けることで、組織全体のパフォーマンスは大きく向上します。
生成AIは、文章の作成・要約・整理に強みを発揮します。議事録の作成やメールでの顧客対応について、具体例を以下にあげます。
①議事録の作成
議事録は「書くのが面倒で後回しになる業務」の代表です。従来は、会議中にメモを取り、話の流れを整理し、話し言葉を文章に変換する必要があり、多くの時間が奪われていました。さらにオンライン会議では、参加者の発言を追いながら記録を残す負担が大きく、「終わってからまとめよう」と思っても、結局後回しになりがちな業務です。
生成AIを使えば、この負担部分を削減することができます。Zoom無料版でも、会議中に表示される字幕や文字起こしパネルの内容をコピーして、AIに貼り付けて要点整理を依頼するだけで、数分で読みやすい議事録が仕上がります。保存した文字起こしデータを生成AIに読み込ませ、「要点を3行でまとめて」や「決定事項と担当者を整理して」と指示すれば、5分で読みやすい議事録が完成します。
(議事録作成の例)
以下は営業会議の文字起こしです。
→発言内容を整理し、主要な議題ごとにまとめてください。
→決定事項・担当者・期限をまとめてください。
→次回に検討すべき課題を3つ挙げてください。
②メールでの顧客対応
謝罪する場合など、気を使う文章もAIがサポートできます。
「誠実かつ前向きな印象で」「短くまとめて」と伝えるだけで、文案候補が複数提示され、文章作成のスピードが上がります。
(メールや顧客対応文の例)
納期遅延のお詫びメールを作成します。
メールの相手は長年取引のある製造業の担当者です。
→冒頭でお詫びの気持ちを明確に伝えてください。
→原因を簡潔に説明し、再発防止策を添えてください。
→結びには誠実で前向きな印象を残してください。
→全体で200〜300文字程度、ビジネスメール形式で作成ください。
実は、生成AIから生み出されるアウトプットの8割は「プロンプト(指示)」やり方で決まります。指示が曖昧だと、意図していない文章が出てきてしまいます。しかし、背景・目的・相手・形式をきちんと支持するだけで、AIは驚くほど実務に適したアウトプットを出してくれます。
そこで、良いプロンプトを作る前段として、以下のチェック項目を満たしている事が非常に重要になります。
◆プロンプト作成前に確認すべきチェックリスト
1)プロンプト(指示)を3行で説明できるか
背景・目的・相手を整理できているかがポイントです。
2)文章の形式は明確か(文書/箇条書き/表など)
形式を指定すると、修正の手間が大幅に削減します。
3)目的(誰に・何を伝えるか)が明確か
目的を伝えることで文章のトーンや構成が最適化されます。
4)一度で完璧なアウトプットを求めず、試しながら改善していく
試行回数が多いほど質問力が鍛えられ、結果も良くなります。
生成AIの活用は、
“どれだけ良いプロンプトを作れるか” が最重要ポイントです。
そのために、
上記のチェックリストを プロンプト作成前の準備 として活用すると、AIの出力は格段に品質が良くなります。
「後回し業務」は誰にでもあるものです。しかし、その多くはAIを活用するだけで一気に進みます。生成AIは、その“きっかけ”を担う最適なパートナーです。
小さな業務から試すことで、5分の短縮が積み重なり、やがて月100時間の削減を生み出します。完璧を目指すより、まずは身近な業務から試してみましょう。それが、働き方を変える最初の一歩です。
コンサルティング・ビジネス研究会 中小企業診断士 伊藤敬久

