本書は、大切な誰かを育成する責任がある人のための本です。部下を持つ管理職の方、後輩を育成する立場にある先輩社員、お子さんがいる親御さんなど、大切な誰かを育成する責任がある人に向けて書かれた本です。人が育つために、上司は、どのような「行動」「姿勢」をとるのが良いのかということについて、5つのステップで、豊富な具体例を交えながら解説されています。
1.中田先生の体験談が随所に散りばめられている
2.キーワードは「共感力」
3.読んで共感できたこと
4.最後に
著者の中田先生は、大企業の管理職を7年、独立して経営者として6年の実績があります。また、大学時代には野球の学生日本代表にも選抜され、現在は野球の指導者としても活躍されていて、ビジネスパーソン、野球人としての数々の体験談が散りばめられていて非常に理解しやすい内容になっています。
人を育てる立場にある人に求められるのは、特殊な才能や仕事のスキルではなくて、「共感力」という人としての「あり方」「姿勢」だと本書には書かれています。「共感力」とは、他人の気持ちがわかり、かつ、他人からも自分の気持ちをわかってもらう力です。共感力を発揮し人を育てるために、実践すべき5つのメソッドが示されています。
【感謝を伝える】
大切な人に、きちんと言葉で感謝を伝えること。
【可能性を信じる】
大切な人の可能性を最後まで信じ、相手の自信をあなたが育ててあげること。
【誤った行為を叱る】
叱る時は人格を否定せず、誤った行いを短い言葉で叱ること。
【感情を共有する】
恥ずかしがらず、喜怒哀楽を一緒に表現すること。
【チーム心を養う】
チームのために自分に何ができるのか?を全員が自問自答できる雰囲気を作ること。
【自らが本気になるのが大事】
本書では、上司の側がまず本気になって、その姿勢を見せていく必要があると何度も書かれています。皆様の会社の上司・経営者の方にもいろいろな方がいると思います。自分事として本気で仕事に取組み、部下にも真剣に接している上司だとついていこうと思えますよね。
当たり前のことかもしれませんが、人に良い影響を与えたければ、まず自らが前向きに、そして本気で仕事に取り組んでいくことが大事なのだと再認識しました。
【敢えて「壁」を作って接すること】
部下の成長のためには、敢えて「壁」を作ること、すなわち「愛厳の精神」を持つことが必要と書かれています。愛厳の精神とは、“「自分と関わることで、この部下はきっと良くなる」と信じ切りそのためにあえて厳しいことを伝える心構え”としています。
つまりは、いつも部下に対して耳当たりのよい言葉だけをかけるのではなく、成長を促すために敢えて耳に痛いことばを与える必要があるとしています。(もちろん頭ごなしにダメ出しをするのはNGです。正しい叱り方も本書では解説されています。)
やはり自分の経験として、優しい上司や指導者の下では非常に居心地は良いのですが、それに安住してしまい伸び代を最大限生かせていないのではと思いました。部下に対して厳しく接するということは、それだけ信頼関係や責任を持たなければいけません。しかし、本書のキーフレーズである「共感力」がしっかりあれば、部下にも意図が伝わり、より成長を促していけるのだと思います。 部下の成長を本気で願っている方には、本書はぴったりの本だと思います。ご興味を持たれた方は、ぜひ本を手に取っていただければと思います。
岡田 知晃(中小企業診断士)
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