今回は歯科業界に浸透しているCAD/CAMについてと、それらの機器導入に活用できるものづくり補助金について解説する。
目次 |
1.患者が歯医者に来ない理由
2.歯科技工におけるCAD/CAMの浸透 3.CAD/CAM導入の課題と、もの補助活用の具体例 4.まとめ |
歯科医の方は治療途中で来なくなった患者に出会ったことがないだろうか。患者がこなくなってしまう理由は、治療が長引くことにより通うことが面倒になるためである。
ホワイトニング専門歯科医院「匡仁会」が100人に行ったアンケートによると、年間に歯医者に行く回数は、「1回」という回答が半数以上の56%最も多い。年1回程度しか通わない主な理由としては、「日々の生活があるため通う時間がない」という時間の長さから敬遠する患者が多い。
「出典:ホワイトニング専門歯科医院匡仁会『年に何回歯医者さんに通っていますか?』アンケート調査」
歯科医師の気持ちからすると、人が生活する上で欠かせないものである歯の治療に、手間も時間もかかるのは当然のことなのだが、できるだけ早く治療を済ませたいと思う患者の気持ちもわからなくはない。この「できるだけ早く治療を済ませたい」患者のニーズと歯科医師の「しっかり治療をしたい」というニーズを叶えてくれるのが「ものづくり補助金」活用が可能なCAD/CAMなのだ。
近年、歯科技工は技術進歩と、一部保険適用範囲の拡大によってCAD/CAMの導入が浸透してきている。2014年にCADCAMの保険導入、2016年、2020年には、大臼歯、小臼歯の保険適用が拡大されたことによって、CADCAM冠の出荷推移は年々上昇している。
「出典:CADCAM冠の普及状況 ヤマキンニュース」
国内にCADCAMの保険適用が導入されてからすでに2倍以上の市場規模に拡大が進んでおり、昨年の法改正も相まって、今後も市場規模のさらなる拡大が期待される。今までは歯科技工がほとんど外注されていたが、現在はCAD/CAMシステム導入により、で技工物を内製化できるようになった。これにより納期短縮など生産性向上のメリットを享受することができるのである。自社で歯科技工内製化ができれば、従来の歯科技工や、技工所への外注と比較して、納期は1週間~1か月ほど短縮することができるようになる。
図:歯科技工製作工程比較
図:歯科技工CAD/CAM導入メリット
図:歯科技工設備概要
一方で、CAD/CAM一式を導入するには計測器スキャナー、設計装置CAD、製作加工機など機器の導入が必要になり、先進技術なだけあって費用も高額という課題もある。これらすべての相場価格はおおよそ1,500万円となっており、自己負担では相当な出費になり、資金繰りを圧迫しかねない。
これらの導入費用等の課題を解決してくれるのがものづくり補助金(もの補助)である。もの補助とは中小企業庁が実施している国の補助金制度である。中小企業が売り上げや生産性の向上につながる新サービスや試作品の開発、生産プロセスの改善を行う際、その設備投資費用の一部を国が負担してくれるものである。
「出典:ものづくり補助事業公式ホームページ」
また、上記図表にある様に、もの補助は技術面、事業面、政策面、の3つの観点から審査をされる。先述したような「1日で白い歯を創れるマシーン」は、他社との差別化になり、審査項目技術面にある「①取り組み内容の革新性」「④技術的能力」事業化面の「②市場ニーズの有無」政策面の「②ニッチトップとなる潜在性」などに当てはまるといえる。
先述した機器の導入にもの補助を活用することができれば、自己負担額を1,500万円から、なんと3分の1の500万円にまで抑えることができるチャンスがある。これはチャレンジしない手はないのではないだろうか。
しかし、このコラムを読まれている歯科医師の方々は、日々の仕事が忙しく、補助金申請の時間などないのではないだろうか。特にもの補助は、補助金額が大きい分提出資料も多い。「どうせ申請するなら採択されるように申請書を作りたいけど、そんな時間ないよ」と思っているそこのあなた。補助金実施件数・採択率の高いCB研に相談すれば、その悩みは解決できるかもしれない。
佐藤 勇樹(中小企業診断士)
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